研究実績の概要 |
子宮体部の類内膜癌の一部に浸潤性の高いMELF (microcystic, elongated, and fragmented) pattern を有するものが存在する。我々はこれまで子宮体癌の幹細胞マーカーとされるALDH1 (aldehyde dehydrogenase 1)に関連するタンパク質を検索する過程において、S100A4 の高発現が類内膜癌の増殖、浸潤及びMELF pattern に関連することを明らかにした(Tahara et al., Cancer Sci. 2016; 107: 1345-52)。さらにMELF patternに関連するものを検索する過程で、SDPR (serum deprivation-response protein, cavin-2)もMELF patternに関連していることが分かった(Tahara et al., Cancer Sci. 2019 Mar 25. doi: 10.1111/cas.14007)。SDPRは細胞内輸送やシグナル伝達に重要な働きをするcaveolaeを構成する分子の1つである。類内膜癌培養細胞株HEC-1B及びHEC-108においてSDPR遺伝子をノックアウトしたところ、ALDH1陽性細胞の著明な減少を認めた。ノックアウト細胞ではコロニー形成能、浸潤能の低下が見られたが、これはALDH1を高発現する細胞ではこれらの能力が高いことと一致した結果である。その他にもノックアウト細胞では遊走能の低下、上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition, EMT)に関わるタンパクの発現の低下を認めた。これは類内膜癌のヒト病理組織標本を用いた免疫組織化学染色において、EMTの亢進を示唆するMELF patternを有する症例でSDPR陽性例の増加が見られたことと合致するものであった。
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