申請者らは、本研究で作成したマウス抗ヒトオクルディン単クローン抗体(67-2)のエピトープを特定するため、ヒト肝癌由来細胞株(Huh7.5.1)のオクルディンの第二細胞外ループ(アミノ酸配列:214-224番目)の各領域に変異を加えた安定発現細胞株を樹立した。この変異細胞株を用いてHCVの感染率を調べ、本抗体のエピトープを明らかにした。加えて、トランスウェルに培養した細胞層の経上皮電気抵抗(TER)を調べた所、本抗体の投与の有無に関わらず、細胞層のバリア機能の変化は見られなかった。蛍光免疫染色法を用いてアミノ酸のN末端から216番目のシステインをアラニンに置換した細胞株において、オクルディンが膜領域から消失する様子が見られた。既報ではこの部位のアミノ酸置換によりHCVの感染率の低下が認められたことがRT-PCRにより示されているが、本結果からHCVがオクルディンを認識しエントリーする過程を経るためには、膜領域に局在するオクルディンの高次構造の保持が必要であると示唆された。また、オクルディンが細胞質に内在化する作用機序を特定するにあたり、関連すると思われる膜タンパク質分子をノックアウトして調べた。この結果、ヒッポシグナル伝達経路に関係するAjuba分子が関与していることが示唆された。加えて、蛍光免疫染色により内在化オクルディンはオートファゴソーム膜形成のマーカーの一つであるLC3と共局在することが示された。HCVの感染成立に必須の分子であるヒトオクルディンは、その具体的な役割がほとんど分かっていないため、この機構の詳細が明らかになれば、オクルディンの本質的な役割の一部を明らかにできると期待される。
|