研究実績の概要 |
肺の構造を保つ上で、弾性線維は重要な構造物であるとともに、炎症や腫瘍における構造変化の評価においても重要な要素とされている。弾性線維の増加は、腺系腫瘍において良悪問わず認められる特徴的な所見である一方、腺系以外の肺腫瘍は肺以外の腫瘍では認められない点において、各種浸潤癌の間質に普遍的にみられる膠原線維増生とは異なる。 本研究では、肺腺系腫瘍固有の弾性線維に富むマトリックス形成機序を解明し、「肺腫瘍間質のelastosisは普遍的な腫瘍間質ではなく、肺に特徴的な反応であり、その機序は発生に求められる」という仮説を証明することを目的とした。 1年目において、外科的肺切除症例からAIS,浸潤性腺癌,良性病変を抽出し、免疫組織化学的に、肺腺系腫瘍の弾性線維形成においてⅡ型肺胞上皮類似の性質を有する腺系細胞の置換性増殖と、腫瘍細胞直下に存在するsubepithelial myofibroblast(SEMF)の存在が重要であることが確認できた。しかしながら、腫瘍細胞における胎児期Ⅱ型肺胞上皮細胞の性質の有無については免疫組織化学的に評価することが困難であったことから、2年目は、特に肺腺癌における遺伝子変異の種類による弾性線維形成の違いに着目して検討することとした。現在、外科的肺切除症例のうち遺伝子検索を施行されている肺腺癌症例100例を抽出し、弾性線維形成について形態計測および半定量的な評価し、検討を行っている。
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