研究実績の概要 |
大腸腫瘍における体細胞コピー数変化 (copy number alteration, CNA)解析を目的に, 大腸腺腫, 粘膜内癌, 進行癌 計120例 (低グレード腺腫 40例, 高グレード腺腫 25例, 粘膜内癌 35例, 進行癌 20例)における内視鏡切除検体, 外科手術検体の腫瘍部, 非腫瘍部から検体を採取し腺管分離法を施行した.分離腺管からDNAを抽出し HumanCytoSNP-12v2.1 BeadChip を用いてCNA解析を行った. CNAの判定についてはillumina社のアルゴリズムに則りGain, LOH, Copy neutral LOH (CNLOH)を各染色体ごとに判定した.低グレード腺腫では5qのCNLOHをみた.高グレード腺腫は7p, qのGainを多くみた. 粘膜内癌は13q, 7p, qのGainを多くみた.進行癌では多くの染色体領域でコピー数変化をみた.低グレード腺腫と高グレード腺腫間では7p22.2-22.3のGainで有意差をみた. 高グレード腺腫, 粘膜癌間では13qのGainで有意差を認めた.粘膜内癌, 進行癌間では多くの領域での染色体コピー数変化における有意差を認めた. 染色体コピー数変化異常領域の総和は低グレード腺腫は高グレード腺腫, 粘膜内癌, 進行癌に比して明らかに少なかった. 進行癌における染色体コピー数変化異常領域の総和は低グレード腺腫, 高グレード腺腫, 粘膜内癌に比して多かった. 高グレード腺腫, 粘膜内癌間では 染色体コピー数変化異常領域の総和において有意差をみなかった. 各疾患カテゴリー別に染色体コピー数変化の頻度や傾向が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析した症例ごとの臨床病理学的特徴 (男女比, 発症年齢, 発生部位, 肉眼型)と染色体コピー数変化との関連を解析する予定である.また変異解析 (KRAS, TP53変異), DNAメチル化解析, microsatellite instability解析も追加で行いコピー数変化との関連についても解析予定であり, コピー数変化から階層的クラスター解析を施行し大腸腫瘍のパターン分類を行う予定である.
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