研究課題/領域番号 |
18K15092
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
井上 久子 北里大学, 医学部, 講師 (20813504)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 卵巣漿液性癌 / ALK |
研究実績の概要 |
卵巣癌の外科的切除検体を用いて免疫組織化学的検討を行った。ALKは腫瘍細胞の細胞膜及び細胞質にタンパク質発現が認められた。卵巣癌4大組織型のうち、漿液性癌に有意に高発現を示し、その39.3%で強陽性所見を認めた。次に、ALK mRNAの発現を調べるためにRT-PCRを行った結果、漿液性癌で高発現である傾向が認められ、タンパク質発現と強い正の相関関係にあった。免疫組織化学染色の結果より、ALK発現はFIGO stage、pT、N、腹膜播種といった悪性度に関与する因子と有意な関連性を認めた。更に、ALKは活性型(p)-Aktを亢進し、そのpAktはさらにMDM2/p53シグナル系やBcl-2シグナル系を制御することが報告されている。従って、ALK発現が起点となりアポトーシス回避・細胞生存シグナル系が活性化され、腫瘍進展に関与している可能性がある。今後、培養細胞を用いたALK/pAkt系によるMDM2/p53やbcl2機構の制御システムの解析により、ALK陽性HGSCの生物学的特性を解明する予定である。最終的には、ALK陽性卵巣癌における新規治療戦略の開発に繋げる研究に発展させたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに順調に検索が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ALK発現調節上流因子の同定・決定①ALK遺伝子のプロモーター領域をpGL-4B-luc vectorにクローニングする(作製済)。②このプロモーター領域内に結合する候補転写因子を選出する。これらの候補分子のcDNAをpGL4B-ALK-lucと一緒に卵巣癌細胞へcotransfectionし、ルシフェラーゼ法でその活性の変化を検索する。③同定した転写因子のALK遺伝子プロモーター内の結合部位を決定する。④同定した候補転写因子の発現を、卵巣癌の臨床検体で確認する。2)ALK下流因子の同定:増殖・アポトーシス制御系 ①細胞増殖:恒常的ALK過剰発現卵巣癌細胞を作製し(作製済)、その細胞増殖能の変化を検索する。また、細胞周期および細胞周期関連分子の発現変化を検索する。②アポトーシス:恒常的ALK発現卵巣癌細胞を、シスプラチンなどの抗癌剤で処理して、アポトーシス誘導をFACS、TUNEL染色などで検索する。同時にアポトーシス関連分子の発現変化も検索する。 3)ALK発現とEMT/癌幹細胞化機構 ①EMT:ALK恒常的過剰発現卵巣癌細胞で、EMT誘導因子添加による細胞形態の変化を検索する。同時に、EMT関連マーカーの発現変化を検索する。②癌幹細胞化:恒常的ALK発現卵巣癌細胞を間葉系幹細胞培養液で培養し、癌幹細胞化の効率をAldefluor assayやSpheroid形成能の検索で判定する。同時に、EMT誘導による癌幹細胞化との関連性も検索する。③薬剤耐性能:ALK依存性EMT誘導に伴う癌幹細胞化機構・抗癌剤耐性能亢進を証明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究立案時に想定した予定よりも実験が順調に進んだため、無駄な支出が抑えられたため。
|