研究課題/領域番号 |
18K15092
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
井上 久子 北里大学, 医学部, 講師 (20813504)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 卵巣漿液性癌 / ALK / 次世代シークエンサー / 神経内分泌マーカー |
研究実績の概要 |
昨年度の卵巣癌(漿液性、粘液性、類内膜性、明細胞性)の臨床検体を用いた免疫組織学的検索で、漿液性卵巣癌で統計学的に有意にALKの高発現を認めた。漿液性卵巣癌でのALK発現は、予後不良の臨床病理学的因子と密接な関連を示した。また、ALK高発現群は、ALK低発現群に比べて統計学的に有意に予後不良で、ALKは漿液性卵巣癌の独立した予後不良因子であった。この分子メカニズムを解明するために、漿液性卵巣癌培養細胞で、内因性ALK発現を有す細胞でALKのノックダウン系、内因性ALK発現の無い細胞で、外因性にALK遺伝子を導入してALK過剰発現系を作製した。内因性ALKをノックダウンした細胞では、細胞増殖能の亢進、アポトーシスの低下を認めた。一方、外因性ALK過剰発現系では、そのノックダウン系の細胞動態と反対の所見を認めた。次に、ALK過剰発現系とノックダウン系の細胞から夫々RNAを抽出し、次世代シークエンサーで、網羅的にALK関連遺伝子の検索を行った。その結果、ALK発現と密な関連を示す分子として各種神経内分泌マーカーを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りALKにより発現制御される分子の同定が完了しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
ALK下流因子の同定:増殖・アポトーシス制御系<目的>卵巣癌でのALKの機能解析を、細胞増殖とアポトーシス制御の観点から検索する。 <方法>①細胞増殖:ALK遺伝子を恒常的に過剰発現する卵巣癌細胞を作製し、その細胞増殖能の変化を検索する。また、細胞周期および細胞周期関連分子の発現変化を検索する。②アポトーシス:恒常的ALK過剰発現卵巣癌細胞を、シスプラチンなどの抗癌剤で処理して、アポトーシス誘導をFACS、TUNEL染色などで検索する。同時にアポトーシス関連分子(bcl2、bax、XIAP, survivinなど)の発現変化も検索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
順調に実験が進み、当初想定した予算より少額で研究を進めることができた。次年度使用額は、今年度の研究計画に組み込む予定である。
|