研究課題
難治がんの代表である膵癌に対する治療が模索される中、腫瘍間質の修飾により免疫治療効果が顕著に増強されることが明らかとなりつつある。本研究は、膵癌に対する免疫間質療法の実用化・個別化への展開の基盤となる成果を創出する。具体的には、患者組織の精緻な定量解析を用いて、ヒト膵癌においてT細胞性免疫の抑制に中心的役割を果たす間質因子・細胞を同定し、免疫抑制性微小環境に基づく膵癌サブクラス分類の提唱を達成する。我々は、CD8+細胞の組織内密度を定量測定する画像診断技術を開発し、200例以上の膵癌症例で検証した結果、その大多数で腫瘍中心のCD8+細胞浸潤が辺縁に比して顕著に抑制されていることを客観的数値として示すとともに、T細胞性免疫活性ならびに膵癌微小環境の持つ免疫抑制活性をin situで数値化する手法を確立し、これらの指標の臨床病理学的意義を国際学会及び原著論文として発表した。さらに腫瘍中心と辺縁のCD8+細胞浸潤に大きな差のある症例につき、先行研究で報告されている様々な免疫抑制因子を検証する中で、CD8+細胞の腫瘍内浸潤抑制に関わる有力な候補として、膵癌特有の線維性間質に着目した。多重蛍光染色を応用した画像解析を用いて、複数の線維芽細胞サブタイプを同定することに成功し、これらの占有率やコラーゲン量を同一切片上で定量画像解析したところ、膵癌間質が3種の異なる間質組成タイプに亜分類され得ることを見出した。このうち、ある特定の線維芽細胞サブタイプに富む間質組成タイプでは、前述した免疫抑制活性の指標との相関が示され、強い免疫抑制活性で特徴づけられる間質タイプであることが示唆された(論文投稿中)。この結果は、Science誌などで報告されている膵癌モデルマウスを用いた先行研究結果を支持するヒト組織での初のエビデンスとして重要であり、免疫療法との併用を想定した間質標的治療の実現が期待される。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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