研究実績の概要 |
節外性T細胞性リンパ腫の一つであるMonomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma (MEITL) は消化管に原発するきわめて予後不良で稀なT細胞リンパ腫である。近年、MEITLの遺伝子異常が明らかにされてきており、がん抑制遺伝子であるSETD2やJAK-STAT経路に関わる遺伝子の変異が報告されている。本研究では本邦のMEITLの遺伝子異常に関して欧州例との異同を明らかにするために、Targeted sequencingを行った。さらにその結果を我々が過去に行ったOncogene analysisの結果 (Mod Pathol. 2015) と比較した。 本邦のMEITL 9例についてTargeted sequencingを行った。SETD2変異 (7/9), JAK1変異 (4/9), JAK3変異 (6/9), STAT5B変異 (3/9)を認め、その他TP53変異 (2/7), PIK3CD変異 (1/7), ATM変異 (1/7) を検出した。 Oncogene analysisでは3p21 (SETD2) loss (4/7), 1p31 (JAK1) gain (1/7), 17q21 (STAT5B) gain (1/7) を認め、1p36 (PIK3CD), 11q22 (ATM), 19q13 (JAK3), 17p13 (TP53) のgain/lossはみられなかった。 今回の研究で本邦のMEITLにはSETD2変異を高頻度に認め (7/9, 78%)、変異のない2例にも3p21 (SETD2) lossを確認した。これらの結果は欧州例の報告 (Nat Commun. 2016) と合致しており、MEITLの欧州例と本邦例では共通の遺伝子異常を示すことが示唆された。
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