研究課題/領域番号 |
18K15102
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 裕美 日本大学, 医学部, 客員研究員 (90547118)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスグルタミナーゼ2 / 肝細胞癌 / 早期再発 / Wnt/β-catenin signaling / TGF-β |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、TGM2高発現肝癌細胞株(shCont)と低発現株(shTGM2) を用いて、以下に示すTGM2発現の腫瘍生物学的意義を明らかにした。 (1)細胞増殖能を再検証した。shContにおける細胞増殖亢進は再現性が確認できず、細胞増殖へのTGM2関与は直接的でないと考えられる。 (2)腫瘍間質相互作用の観点から、TGF-βシグナルによる上皮間葉転換(EMT)感受性について検討を行った。TGF-β刺激下でTGM2の発現亢進が見られたが、EMT関連遺伝子の発現亢進はTGM2発現に非依存的であった。 (3) Gene Chip array解析から示された、TGM2により発現変化する一連の遺伝子について…①SWIF/SNF complex遺伝子群の発現変化はqPCRで確認できず、クロマチンリモデリングへのTGM2関与は現段階では否定的であった。②shContにおける、Wnt/β-catenin シグナルアンタゴニスト、DKK family遺伝子の発現低下はqPCRでも確認できた。β-cateninタンパク質発現量に変化は無いが、核移行について確認したい。同時にWntシグナル刺激下での感受性の違いに結びつけられるか、検討したい。 以上のように、TGM2の腫瘍生物学的意義は、直接的作用よりは間接的に関わる可能性がある。癌間質はTGF-βの供給源でもあり、また癌-間質相互作用がWntシグナルのdysregulationに関与していると報告されている。間質に隣接する癌細胞に高発現するTGM2の意義(TGF-β及びWnt/β-cateninシグナルとの関わり)を、本培養細胞系を用いて解明できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、適切なTGM2高/低発現肝癌細胞株を用いることが必要である。そのため、研究スタート時にまずは複数の肝細胞癌株に対し、リアルタイムq-PCR法によるmRNAの定量及び、ウェスタンブロット法によるタンパク質発現定量を実施して各種肝癌細胞株のTGM2発現量を検証した。 これらの予備実験を行い、本研究に適した肝細胞癌細胞株を選定するまでに時間を要したため、全体に実験計画が後ろ倒しとなりやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
TGM2による細胞増殖能や遊走能の変化は、monolayer cultureでは観察できなかった。今後、より生体内の環境に近づけた状態で観察するため、3D cultureを取り入れた上で増殖能等に違いがないか再確認する。 また、mRNAレベルで発現量の違いが観察できた遺伝子群、特にWnt/β-catenin及びTGF-βシグナルに関連する遺伝子については、タンパク質レベルでの発現量・局在の変化等を確認しながらそれらの遺伝子がTGM2と共に肝細胞癌の悪性化、早期再発に寄与するか検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりGene Chip array解析を低額で実施することができ、また研究計画に遅れが生じたため次年度使用額が発生した。今後、細胞をmonolayer以外に3D培養したうえで増殖能等の比較を実施したく、各種細胞アッセイキットが必要となるためその用意に充てる。 また、Wnt/β-catenin及びTGF-βシグナルに関与する遺伝子群の、TGM2発現と連動したタンパク質レベルでの発現変化を観察するため、各種抗体や染色キットを購入して解析を進める。
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