研究課題
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)由来の成熟T細胞腫瘍であり、予後不良な疾患である。近年、次世代シークエンサー等を用いた解析により、AITLの遺伝子変異(TET2、RHOA、DNMT3A等)が明らかになり、それによる多段階発がんモデルが提唱されている。我々はAITL及びその前駆病変であるT-zone dysplasia(TZD)の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにすることを目的としている。本研究を進めるためにAITL症例を約300例収集した際に、メトトレキサート(MTX)使用中の患者に発生するAITL症例があることを発見した。MTX使用中にT細胞性リンパ増殖性疾患(LPD)が発生することは極めて稀であり、研究対象になると考えられた。そこでMTX関連T細胞性LPD症例を28例収集し、臨床病理学的解析を行い、国際学会発表(USCAP 2019)、論文発表(Modern pathol. 2019 Apr 5[Epub ahead of print])を行った。MTX関連T細胞性LPDで一番多い組織型はAITLであり、またMTX中止により病変退縮が期待できることを明らかにした。またAITLのうち60歳以下に発生する若年性AITLでは背景にEpstein-Barr virus(EBV)陽性細胞を有する症例の方が有意に予後良好であることを見出し、予後予測に有用であることが示唆された。この結果の詳細については現在論文投稿中である。この様にAITLに関する臨床病理学的解析は進んでいる。平行して現在、AITLおよびTZDの分子生物学的特徴を明らかにすべく、次世代シークエンサーを使った解析を行うための準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに我々はメトトレキサート使用中患者に発生するAITLおよび若年者に発生するAITLの臨床病理学的特徴を明らかにした。前者に関しては国際発表、論文発表を行い、後者は論文投稿中である。
我々はさらに、AITLおよびTZDの分子生物学的特徴を明らかにすべく、次世代シークエンサーを使った解析を行うための準備を進めている。現在、ターゲットシークエンスを行うのに適した症例を選択中であり、準備が出来次第シークエンシングを行い、データ解析を行う予定である。
支出のうち大きな割合を占めるのは次世代シークエンシングを用いたターゲットシークエンスである。初年度にそれにかかる費用を支払う予定であったが、研究代表者が留学中ということもあり、次年度に帰国後にターゲットシークエンスを行うことになったためである。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Modern Pathology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1038/s41379-019-0264-2
Pathology International
巻: 69(1) ページ: 21-28
10.1111/pin.12745