研究課題
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)由来の成熟T細胞腫瘍であり、予後不良な疾患である。近年、次世代シークエンサー等を用いた解析により、AITLの遺伝子変異(TET2、RHOA、DNMT3A等)が明らかになり、それによる多段階発がんモデルが提唱されている。我々はAITL及びその前駆病変であるT-zone dysplasia(TZD)の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにすることを目的として研究を開始した。これまでにメトトレキサート(MTX)使用中の患者に発生するAITL(MTX-AITL)症例に関して臨床病理学的解析を行い、国際学会発表(USCAP 2019)、論文発表(Modern Pathol. 2019 Jul;32(8):1135-1146)を行った。またこの結果を主とした総説論文を発表した(J Clin Exp Hematop. 2019;59(2):56-63.)。またAITLのうち60歳以下に発生する若年性AITLに着目した研究結果を論文発表した(Cancer Med. 2020 Jan;9(2):678-688)。若年性AITLでは背景にEpstein-Barr virus(EBV)陽性細胞を有する症例の方が有意に予後良好であることを見出し、予後予測に有用であることを明らかにした。最終年度にはMTX-AITLでは約7割の患者においてMTX中止による自然退縮が見られるが、そのメカニズムを明らかにするためにMTX-AITLと通常AITLの微小環境の比較をnCounter systemを用いて行った。MTX-AITLでは微小環境中にplasmcytoid dendritic cellが有意に多く、MTX-AITLの臨床的特徴に関与している可能性が示唆された。
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