研究実績の概要 |
直接作用型抗ウイルス剤の開発により, 慢性C型肝炎/肝硬変ではC型肝炎ウイルス (HCV) を100%近い確率で排除 (SVR) することが可能になった. ただし, SVR後でも種々の確率で肝発癌がみられており, 現在, C型肝炎SVR達成後の症例に対する適切な診療アルゴリズムの構築が議論されている. 本研究は, C型肝炎SVR達成後に肝細胞癌 (HCC) の発癌を認めた症例について, (1) 臨床病理所見および免疫組織化学による予後不良因子の検索, (2) 脈管侵襲に関わる分子の遺伝子解析を行うことでC型肝炎SVR後に発癌したHCCの予後予測, 高悪性度HCCの絞り込みへ応用するための研究基盤の確立を目的とした. 研究実施計画では, C型肝炎SVR後にHCCで肝切除された症例49例の肝組織に対して, 平成30年度から平成31年度にかけて臨床病理学的検討及び免疫組織化学, 遺伝子解析を計画し, 現在までに, (1) 臨床病理学的検討及びサイトケラチン19 (CK19), 上皮細胞接着因子 (EpCAM), G蛋白質シグナル調節蛋白質5 (RGS5) の免疫組織化学を行った. これまでに, 臨床病理学的な核異形度, 核分裂像の評価と免疫組織化学によるRGS5発現の評価を組み合わせることで, 術後再発を伴いやすい高悪性度HCCのスクリーニングが期待できることを見いだした. また, 免疫組織化学によるCK19及びEpCAMの発現の評価を, 高悪性度HCCのスクリーニングとして単独で用いるのは感度が低い可能性が示唆された. これらの結果は, 国内及び国際学会で報告した. (2) RGS5はHCCで門脈侵襲を促進する分子として報告されており, 肝細胞癌組織中のRGS5遺伝子をreal-time PCR法で定量し, 検討を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 臨床病理所見および免疫組織化学による予後不良因子の検索は, 得られた結果の論文発表を行う予定である. (2) 脈管侵襲に関わる分子の遺伝子解析は, RGS5はHCCで門脈侵襲を促進する分子として報告されており, 肝細胞癌組織中のRGS5遺伝子をreal-time PCR法で定量し解析を進める. ただし, 研究代表者が平成31年4月1日より研究留学のため米国に出向することから, 平成31年度の研究計画は中止に変更となる.
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