混合型肝癌は肝原発悪性腫瘍の約1%未満とされる稀な悪性腫瘍であり、代表的な肝原発悪性腫瘍である肝細胞癌や肝内胆管癌とは異なって、切除以外に有効な治療方法が確立されていない。切除不能の進行例や再発例に対して有効な標準的治療の開発が望まれる疾患といえる。近年、DNA メチル化やヒストン修飾といったエピジェネティックな遺伝子制御機構が、発がんやがんの進展に大きく関わっている点が注目されている。代表的なエピジェネティック機構であるヒストンメチル化に関連した酵素であるEZH2は、その阻害剤の臨床応用が他のがん腫では既に試みられている。今回の研究は混合型肝癌を対象として、EZH2およびEZH2によりメチル化されるH3K27の発現状況を調べ、混合型肝癌におけるエピジェネティック機構の一端の解明を目的とするものである。対象は当施設で切除された混合型肝癌および肝内胆管癌症例である。方法は切除検体から診断のために作製されたブロックを用いて、EZH2およびH3K27me3の免疫染色を行いその発現の有無を検討した。またこれらと臨床病理学的因子との関連の検討を行った。EZH2の免疫染色では混合型肝癌および肝内胆管癌の48例中27例に陽性となった。またH3K27me3も48例中27例に陽性となった。これらのうち21例がEZH2およびH3K27me3がともに陽性であった。EZH2とH3K27me3の発現には統計学的に相関(Fisherの正確確立検定にてp=0.0011)が認められた。ともに陽性となっている群はヒストンメチル化が腫瘍の発生・進展に関与している可能性が考えられ、他の癌腫で同様の報告もなされている。しかしながら免疫染色の結果と真のメチル化異常との関連には相反する様々な報告がなされていることから、この点に関しては今後の検討課題と考えられる。
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