近年、心筋梗塞後の組織修復に免疫細胞が関与し、心不全発症を制御することが示されている。本申請者はこれまで、①CD4陽性T細胞(CD4+T細胞)の活性化が組織修復を促進するM2マクロファージ(M2)の誘導に必要であること、②M2が分泌するMMP-12が心筋梗塞後の組織修復を促進し、心不全発症を防ぐことを明らかにした。さらに、心筋梗塞後の組織修復を促進するM2の誘導機構を明らかにするため、(1) 心筋梗塞領域のM2のトランスクリプトーム解析を行い、IL-21受容体がM2に高発現していること、(2) 心筋梗塞領域でCD4+T細胞がIL-21を産生すること、(3) IL-21欠損マウスは心筋梗塞後の生存率が高く、心機能低下が起こりにくいこと、(4) IL-21欠損マウスは梗塞領域における線維化の程度(組織修復の速さ)が高いこと、(5) IL-21欠損マウスは細胞外マトリックスを分解するMMP-9の酵素活性が低く、創傷治癒が促進していること、を見出した。 そこで、本年度は心筋梗塞領域においてIL-21が作用する細胞の同定、およびその細胞にもたらす IL-21の作用の解析、可溶化IL-21受容体-Fcキメラ蛋白(sIL-21R-Fc)によるIL-21中和の急性心筋梗塞後心不全に及ぼす効果を検証した。心筋梗塞領域に浸潤する炎症細胞の解析により、IL-21欠損マウスではM2の数が増加することがわかった。さらに、野生型マウス及びIL-21受容体欠損マウスの心筋梗塞領域から回収したM2にIL-21を添加するin vitro実験から、IL-21によりM2のアポトーシスが誘導されることがわかった。また、野生型マウスにおいて、sIL-21R-Fc投与群は、非投与群に比べ、心筋梗塞作成4週間後までの生存率が上昇し、心拡大が抑制されることがわかった。 この内容をまとめて論文投稿し、現在、査読中である。
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