我々は脂肪組織において脂肪前駆細胞由来のAPDP(Adipocyteprogenitor-derivedproinflammatory)細胞が、脂肪組織炎症のトリガーを引くことを見出した。興味深いことに肝臓においてもAPDP類似細胞が存在することから、この新規炎症細胞(肝臓APDP細胞)が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における炎症の惹起・進展に関与すると考え、APDP細胞を起点としたNASHの病態形成機序の解明を目的とした。炎症誘導初期の肝臓におけるAPDP細胞の機能を解明するため、短期間の高脂肪食負荷またはCCl4投与により肝臓での炎症を誘導し、炎症関連遺伝子発現、APDP細胞ならびに免疫細胞のトランスクリプトームをRNA-seqで解析し、免疫細胞との相互作用に関わるサイトカインを同定した。また、RNA-seqの結果より肝臓APDP細胞のマーカー遺伝子を同定した。肝臓での炎症初期段階として、高脂肪食を1週間~3ヶ月間与えたマウスにおける肝臓APDP細胞の他、マクロファージや単球等の免疫細胞の動態を解析したところ、肝臓APDP細胞の数に顕著な増加は認められなかった。これらの結果から、炎症初期の肝臓APDP細胞から産生されるサイトカインの候補を絞ることができ、肝臓での炎症誘導におけるAPDP細胞と他の免疫細胞との相互作用が考えられた。
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