研究課題
1、色素細胞特異的に遺伝子変異を導入する系を用い、皮膚や足裏に存在する色素幹細胞からメラノーマを発症するモデルマウスの確立に既に成功している。そこで、このメラノーマのモデルマウスを用い、ニッチ因子がメラノーマ発症に先立ちメラノーマを生じやすい環境を作り出すことで、メラノーマのオリジンとなりうる色素細胞をより優位に増殖させている可能性を検証した。昨年度から引き続き、メラノーマモデルマウスにニッチ因子の阻害剤を投与し、ニッチ因子の働きを阻害した際にメラノーマの初期発生が阻害されることを明らかにした。一方で、ニッチ因子が過剰に働くマウスにおいては、メラノーマの初期発生が促進的に見られることも明らかにしており、ニッチ由来の因子がメラノーマの発生に促進的に機能していることが明らかとなった。2、ニッチ因子の分子レベルでの機能解析をin vitroの系で行った。初代ヒトメラニン形成細胞(HEMn-LP)を用い、ニッチ因子存在下において培養すると、DNA修復や抗酸化作用に関わりをもつ様々な遺伝子の発現が上昇することを明らかにした。さらに、ニッチ因子存在下において、放射線によるDNA二重鎖切断や酸化ストレスへの初代ヒトメラニン形成細胞の抵抗性を解析した。その結果、ニッチ因子がDNA修復を早めることや酸化ストレスを早急に収束させることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
1、昨年度に引き続き、発癌性のゲノムストレスにより早期に発現が上昇するニッチ因子に着目し、ニッチ因子がメラノーマの初期発生に与える影響の解析を進めた。ニッチ因子とメラノーマの初期発生の関係性を示す期待通りの結果が出ており、研究は順調に進展している。2、ニッチ因子の分子レベルでの機能を解析し、ニッチ因子存在下において、DNA修復や抗酸化作用に関わりのある様々な遺伝子の発現上昇を見出した。さらには、ニッチ因子存在下において、実際に細胞がDNA修復を早めることや酸化ストレスを早急に収束させるデータも得られており、分子レベルでのニッチ因子の機能も明らかになり、研究は順調に進展している。
1、色素幹細胞特異的に遺伝子変異を導入することで樹立したメラノーマモデルマウスに、紫外線(UVB)を照射し、メラノーマ発症に際し色素幹細胞がどういった挙動を示すのか解析する。また、ニッチ因子と紫外線の関係性も明らかにし、ヒトのメラノーマ治療の基盤を築く。2、現在注目しているニッチ因子の発現が誘導される分子メカニズムを遺伝子改変マウスを用いた研究により明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Nature Communications
巻: 10 ページ: 5023
10.1038/s41467-019-12733-1.