研究課題/領域番号 |
18K15115
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
千葉 朋希 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00645830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 長鎖非コードRNA / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
新たに同定した長鎖非コードRNAが炎症性サイトカインであるIL-6やTNFα、GM-CSFなどの産生に極めて重要であることを示してきた。また、このメカニズムとして転写因子NF-kBのプロモーター領域への動員およびそれに続くRNAポリメラーゼIIの動員の低下による転写レベルにおける制御であることを明らかにしてきた。 本研究ではこの長鎖非コードRNAをゲノム編集技術を用いて遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)を作製し、個体レベルにおける炎症応答への寄与を明らかにすることを目的とした。これまでにゲノム編集技術を用いて、ノックアウトマウスの作製に成功し、LPS投与によるエンドトキシン ショックに対して抵抗性を示す一方で、硫酸デキストランナトリウム(DSS)誘導性大腸炎においては、ノックアウトマウスは感受性を示し、体重減少とともに早期に死亡した。腸管固有層のCD11b陽性マクロファージを単離し、炎症性サイトカインの発現を検討したところ、ノックアウトマウスでIL-6やIL12p40、GM-CSFの発現が顕著に低下していた。その分子機構を明らかにするために結合タンパク質の探索を行ったところRNAヘリカーゼが有力な候補である可能性が示唆された。以上のことから、長鎖非コードRNAはRNAヘリカーゼなどのタンパク質と複合体を形成することで炎症性サイトカインの産生を制御するとともに個体レベルにおいてエンドトキシンショックに対する抵抗性と腸炎における感受性に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにゲノム編集技術を用いて作製した長鎖非コードRNAノックアウトマウスを用いて、腸管固有層より単離した、CD11b陽性マクロファージにおいて、IL-6などの炎症性サイトカインの発現が低下を確認することに成功した。その分子メカニズムとして、1つ目は非 コードRNAが炎症性サイトカインのプロモーター領域に作用し転写を制御する可能性と、2つ目は非コードRNAがタンパク質と複合体を形成し転写を調節する可能 性が考えられた。そこでChromatin isolation by RNA purification (ChIRP)法を用いて非コードRNAと相互作用するタンパク質の同定を試みた。その 結果、非コードRNAと相互作用するタンパク質としてRNAヘリカーゼタンパク質であるDHX9が重要なパートナー分子である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果において新規に同定した長鎖非コードRNAは炎症性サイトカインの転写制御においてDNAまたはタンパク質と相互作用し、機能すると考えられる。ChIRP法に同定したRNAヘリカーゼであるDHX9が新規に同定した長鎖非コードRNAの機能に重要な役割を果たすことが示唆された。今後は長鎖非コードRNAが相互作用するゲノム領域をChIRP法により次世代シーケンサーを用いて明らかにする。また、DHX9のクロマチン免疫沈降やCross linking and immmunoprecipitation(CLIP)を用いてDHX9が相互作用する領域を明らかにすることで非コードRNAの炎症性サイトカインの転写制御における分子機構の解明を目指す。また、硫酸デキストランナトリウム(Dextran Sodium Sulfate、DSS)誘導性腸炎モデルにおいて、腸内細菌により適度に誘導される炎症性サイトカインが腸管の恒常性維持に重要であることが示唆されていることから、DSS誘導性腸炎モデルにおいて、病態形成時における長鎖非コードRNAの発現様式やサイトカイン、インターフェロンの発現をRNA-Seqを用いて経時的に検証し、長鎖非コードRNAの腸管恒常性維持機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を通じて、非コードRNAの炎症性サイトカインの転写制御におけるメカニズムとしてRNAヘリカーゼであるDHX9の関与が示唆された。生体における役割を検証するためにノックアウトマウスの確保と、これらの解析に実施に必要な試薬類の購入とが必要となったため繰越が必要となった。
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