研究実績の概要 |
本研究では、免疫抑制因子および抑制性サイトカインに着目し、インフルエンザの重篤化に関与する寄与因子を同定することを目的としている。 まず2017年に分離された高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスを12頭のカニクイザルに感染させた。感染1日後に抗インフルエンザ薬であるOseltamivir, Zanamivir, Baloxavir及びコントロールとして蒸留水をそれぞれ3頭のカニクイザルに5日間投与した(Baloxavirのみ感染後1日目のみ投与)。感染8日目に安楽殺したが、コントロール群の1頭のみ感染3日目でエンドポイントに達し安楽殺した。 コントロール群のウイルス量が最も多く検出され、Oseltamivir>Zanamivir>Baloxavirの順に検出されたウイルス量が少なくなる結果となった。感染後0、1、3、8日目のサルの末梢血サンプルを用いて、フローサイトメトリーにて免疫抑制因子の発現を解析したところ、どの群も感染3日目でCD4T細胞が多く動員されていた。またPD-1、CTLA-4、TIGIT、LAG-3は感染前と比べて感染後に発現の増加が見られ、コントロール群において顕著だった。さらに、CD8T細胞中のPD-1及びTIGITに関しては、エンドポイント個体における発現量が特に高く、薬剤投与群はこれらの免疫抑制因子は感染8日目には感染前と同程度の発現まで低下していた。サイトカイン産生量では、エンドポイント個体のIFNa, IFNb, IFNg及びIL-6の産生が他個体より多かったが、IL-10に関しては同程度だった。この結果より、PD-1, TIGIT, IFNs及びIL-6が重篤化因子もしくは重篤化因子と相互作用していることが示唆された。今後は、非感染サル及び低病原性インフルエンザウイルス感染サルの免疫抑制因子発現量とサイトカイン産生量を含め比較する予定である。
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