研究課題
骨格筋組織中には間葉系間質細胞(MSC)が存在しており、MSCが産生し分泌する様々な成長因子や細胞外基質は、骨格筋の恒常性の維持や筋再生にポジティブに働いていることが報告されている。それらMSCが産生する細胞外基質の中でも、6型コラーゲン(COL6)は、筋幹細胞の自己複製や骨格筋再生を促進すると報告があり、ヒトでは、COL6の欠損はウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(UCMD)等の筋疾患の原因となることが分かっている。しかしながら、現時点ではUCMDに対する有効な治療法は存在しておらず、そればかりか、病態メカニズムも正確には分かっていない。当該研究では、UCMDモデルマウスに対して、健常者由来ヒトiPS細胞(iPSC)から作製されたMSC (iMSC)を移植する実験を実施し、生着したiMSCから分泌されたCOL6が補充された領域において、筋幹細胞が活性化され、それとともに再生筋の成熟が促進され、結果としてUCMDの病態が改善することを確認した。また、UCMDモデルマウスに由来する筋幹細胞との共培養実験でも、同様に、筋幹細胞の増殖・分化と、筋管の成熟が促進されていることが示された。さらに、COL6産生能力を欠落させたCOL6A1ノックアウト(KO)-iPSCと、UCMD患者に由来するiPSCからもMSC(KO-iMSC, UCMD-iMSC)を作製して、同様の移植実験と共培養実験を実施した。その結果、KO-iMSC及びUCMD-iMSCでは、iMSCで確認された筋再生促進作用が見られないことから、これらの効果はiMSCにより分泌されたCOL6を介したものであることを明確に証明した。これらの成果は、2020年の国際幹細胞学会(ISSCR)で報告し、travel awardを受賞している。現在は、英論文としてまとめ、国際誌への投稿準備を進めている。
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