研究課題/領域番号 |
18K15121
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂本 智子 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (70648427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メチル化アレイ / ダウン症 / 前白血病芽球 / 急性巨核芽球性白血病 |
研究実績の概要 |
ダウン症児において、染色体21番のトリソミーにGATA1変異が入ることで前白血病芽球(TAM)を発症し、さらにエピゲノム制御因子のゲノム変異によって一部のTAM患者は急性巨核芽球性白血病(DS-AMKL)へと進展する。 我々は、これまでにTAMとDS-AMKLの境界を同定するために、TAMおよびDS-AMKLを発症したダウン症患者の血液サンプル、骨髄サンプル、寛解時の正常血液サンプルの微量RNAseqを行い、正常血液細胞、TAMおよびDS-AMKLの芽球における遺伝子発現のプロファイリングを行い、PCA解析によりTAM/AMKLと正常血液細胞は大きく発現プロファイルが異なることを明らかにしている。また、AMKLで発現が更新している遺伝子の同定にも成功しており、GSEAによりそれらが増殖に関連する遺伝子群であることを突き止めている。 また、infinium ヒトメチル化アレイを用いた検討では、正常血液細胞、TAMおよびDS-AMKLの芽球におけるDNAメチル化のプロファイリングを行い、正常血液細胞とTAM、DS-AMKLを分けるプローブの抽出にも成功していた。 今年度は、上記の解析につき、サンプル数を増やして再解析を行った。さらに、TAMからDS-AMKLに進展するサンプルと、寛解するサンプルを区別するために、infinium ヒトメチル化アレイを用いて、TAMおよびDS-AMKLの芽球におけるDNAメチル化のプロファイリングを実施し、DS-AMKLへ進展するサンプル特異的なメチル化プローブの検出を試みたところ、DS-AMKLへと進展するTAMと進展しないTAMを予想するためのプローブの抽出に成功した。これらプローブは、マウスを使った異種移植モデルでも、再現されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、以前行っていた正常血液細胞、TAMおよびDS-AMKLの芽球における遺伝子発現プロファイリング、正常血液細胞とTAM、DS-AMKLを分けるメチル化プローブの抽出を、サンプル数を増やして再解析することができた。 また、今年度開始した、TAMからDS-AMKLに進展するサンプルと、寛解するサンプルを区別するプローブの抽出にも成功している。 これらのことから、当初の計画通りに進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに、TAMからDS-AMKLに進展するサンプルと、寛解するサンプルを予想するプローブの抽出には成功したが、これらのメチル化の差は大きくなかった。 今年度は、抽出したプローブの精度評価と、より特異的なプローブの選定を行うために、患者サンプルを増やし、追加解析および検証を行う予定である。 また、bulkのRNAseqのデータから、TAMからDS-AMKLに進展するサンプルと、寛解するサンプルを区別できるかについても検討を行う。 さらに、TAMからDS-AMKLへの進展において、メチル化が転写制御に与える影響についても検討を行う予定である。この際、メチル化の差が小さかったことから、bulkのRNAseqでは遺伝子発現への影響が検出しにくいことも考えられるため、scRNA-seqを用いて、芽球のみを抽出し、それらの遺伝子発現プロファイルとメチル化パターンの相関について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の実験計画では、初年度でシングルセル遺伝子発現解析のための実験試薬などの消耗品を300万円、学会参加のための旅費を20万円計上した。 今年度はシングルセル遺伝子発現解析の代わりに、取得済みのデータの再解析を中心に行ったため、消耗品の出費が当初計画より少なくなった。次年度は、今年度行わなかったシングルセル遺伝子発現解析の実験を予定しており、これらの経費を次年度へ繰り越すことにした。旅費について、今年度はプロジェクト初年度につき、発表する成果が限られていたため、当初計画より少ない旅費となった。次年度は、今年度得られた成果を発表するための学会参加やそれに関わる研究打ち合わせのための旅費が必要なため、今年度の繰越を含めて、使用する予定である。
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