研究実績の概要 |
これまでに、ダウン症児に発症するTAM(Transient abnormal myelopoiesis)およびAMKL(acute megakaryo blastic leukemia)を発症したダウン症患者の血液サンプル、骨髄サンプル、寛解時の正常血液サンプルのRNAシークエンスおよびDNAメチル化解析をおこない、TAMとAMKLにおける遺伝子発現およびDNAメチル化の違いを明らかにした。一方で、サンプル中のTAMまたはAMKLの芽球の比率が検体ごとに異なることが結果にバイアスをかけていることが示唆された。 今年度は、AMKLの芽球のみを解析するために、AMKL患者から得られた凍結血液検体に対してシングルセル遺伝子発現解析を実施した。AMKLの芽球の判定はGATA1変異で行うため、全長の遺伝子配列が決定できるSMARTer Ultra Low Inputを用いてcDNA合成した。また、cDNA合成の効率を高めるためにC1 Cell Auto-prepおよびWTA IFC(Fluidigm)を用い、90細胞をこえるAMKL細胞と非AMKL細胞のシングルセル解析を行った。GATA1変異をもつAMKL細胞およびGATA1変異のない非AMKL細胞を1細胞ずつ選択し、基礎解析を実施した。AMKL細胞は20,116,280リード、非AMKL細胞は20,815,035リードの情報が得られたため、シークエンス量は十分であると判断した。一方で、マッピング率と取得遺伝子数がAMKL細胞は60.38%/1793遺伝子あったのに対し、非AMKL細胞は4.65%/399遺伝子と極端に低いことが示され、データのクオリティフィルターの設定が必要となった。そこで、検出遺伝子数およびミトコンドリア由来の転写産物の比率を観察することで、発現遺伝子解析に供するサンプルの選択をおこなうワークフローを完成させた。
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