様々な癌種で変異ホットスポットとなるMETTL14 R298P変異に着目して研究を行った。CRISPR-Cas9を用いてこの変異をノックインした細胞株(HEC108、子宮体癌)を作成したところ、METTL14(Wt/Wt)と比較してMETTL14(Wt/Mu)は癌細胞の増殖が亢進していたが、METTL14(Mu/Mu)の増殖は著しく阻害されていた。これらの細胞株についてMeRIP-Seq解析を行ったところ、通常は5'-AC-3'であるm6A修飾モチーフが、METTL14(Mu/Mu)では5'-AU-3'に変化していることを発見した。5'-AU-3'におけるm6A修飾はreader proteinに結合せず、それ自体は遺伝子発現に与える影響は小さいようであった。しかし、異常モチーフがm6A修飾される際に周辺のモチーフが修飾されることによって遺伝子発現が調整されるということを発見した。METTL14(Mu/Mu)の増殖は著しく阻害されている原因は、このような異常なm6A修飾によってc-Metの発現が低下していることであった。これまでRNAのm6A修飾は5'-AC-3'に起きることが観察されていたが、そのメカニズムは不明であった。本研究においてMETTL14のR298が5'-AC-3'配列にm6A修飾を書き込むときに中心的な役割を果たすこと、m6A修飾は正常なモチーフに書き込まれているからこそ機能を発揮できることが明らかになった。
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