研究課題/領域番号 |
18K15124
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
澤野 俊憲 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60805597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 虚血誘導性幹細胞 / ミクログリア / 脳梗塞 / 組織再生 |
研究実績の概要 |
これまでに、脳梗塞後の梗塞巣組織内において多能性を有する虚血誘導性幹細胞(ischemia-induced multipotent stem cells: iSCs)が出現することが報告されている。当研究代表者はこれらの細胞が梗塞組織内においてミクログリアに分化することを見出し、これを虚血誘導性幹細胞由来ミクログリア(iSCs derived microglia: iSMG)と名付けた。本研究ではその機能を解明することで、脳梗塞組織にiSMGが出現することの意義を見出したい。 脳梗塞モデルマウス及び健常マウスからiSMG、梗塞巣近傍領域に存在するミクログリア、健常マウスのミクログリア、出生直後の仔マウスミクログリア、一般的な培養実験で用いられる初代培養ミクログリアを単離・回収し、それぞれの遺伝子発現を網羅的に解析・比較することでiSMGの機能的特徴を検討した。iSMG、仔マウスミクログリア、初代培養ミクログリアには発達プロセスに関与する遺伝子が多く発現していた。しかし、仔マウスミクログリア、初代培養ミクログリアでは神経系発達に関与する遺伝子群が特徴的に発現していたのに対し、iSMGで強く発現が認められたのは血管系発達に関与する遺伝子群であった。血管系細胞の一種であるペリサイトがiSCsの起源であることが既に明らかになっているが、これらのことはiSMGが梗塞巣組織内においてiSCsの出現や維持に関与する細胞である可能性を示唆するものだと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞数が少ないために当初、難航を予想していたiSMGの単離手法を確立することができた。これによって各種ミクログリアとの網羅的な遺伝子発現解析・比較を行うことが可能となり、iSMGに特徴的な機能の推定を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
iSMGが脳梗塞後のiSCsの出現・維持に関与する可能性が示されたことから、ミクログリア除去剤であるPLX3397を用いてiSMGを除去し、iSCs数にどのような影響を与えるのかを検討する。iSMGによるiSCsへの関与を強く示唆する結果を得た場合には、iSMGからのどのような因子が作用しているのかを遺伝子解析結果をもとに推測し、培養実験においてそれを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はmicroarrayを1群につき3匹行う予定であったが、回収できる細胞数が少なかったために、微量遺伝子増幅等の追加料金が発生した。このため、当初の検体数では予算内に収まらないため、プールドサンプルを作製することで1群1検体の解析とした。解析検体数が減少した結果、追加料金を含めても解析費用が減少した。1群1検体の解析となったため、microarrayによって変動を認めた遺伝子について、N数を確保した定量的PCRによって確認する必要が生じた。これを行うために、マウスや磁気ビーズ等のミクログリア単離用品、酵素等のPCR用品の購入に使用する。
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