がん患者の主要な転移先臓器は肝臓であり、生命維持を司る脳や肺への二次転移するための母地となるため、その予後は一般に不良である。しかし、未だ肝転移の予防法は確立されていない。申請者は細胞間接着分子amphoterin-induced gene and open reading frame 2(Amigo2)がマウス肝高転移細胞株(LV12細胞)で高発現しており、肝転移のドライバー遺伝子であることを報告してきた。Amigo2発現を抑制する化合物の同定は肝転移予防の確立に繋がるのではないかと考え、先行研究においてLV12細胞のAmigo2発現を減少させた6種類の候補化合物を見出した。いずれの化合物もLV12-Luc細胞の肝転移を抑制した。次に、候補化合物による肝転移抑制効果が種を超えたものであるか否かを検討する。そのために、本年度では、各候補化合物の肝転移抑制効果をヒトがん細胞で定量的に評価することを目的として、大腸がん細胞株であるHCT116細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入することでHCT116-Luc細胞を取得した。発光を確認し、細胞保存を行った。今後は、このHCT116-Luc細胞を免疫不全マウスの盲腸壁内へ移植し形成される肝転移が候補化合物によって抑制されるか否かを検討する。加えて、KKLS胃がん細胞株についてもルシフェラーゼ遺伝子を導入し、胃壁内への同所移植による肝転移が候補化合物によって抑制されるか否かを検討する予定である。これにより、候補化合物がマウスのみならずヒトの肝転移を抑制することを明らかにする。
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