研究課題/領域番号 |
18K15128
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
春里 暁人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30434509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸管バリア / MDSC / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、組織培養系及び実験腸炎モデルによる検討により、Notch2依存性に誘導されるCD103+CD11b+樹状細胞がIL-36によるIL-23の誘導に必須であることが示された。またIL-36受容体欠損マウスでの抗菌ペプチド発現低下はIL-23の投与により回復することが示され、腸管バリア機能の維持においてIL-36/IL-23/IL-22のサイトカインネットワークの果たす役割が明らかとなった 。一方、近年の研究で消化管の常在細菌がヒトの免疫系に影響を与え疾患の病態に深く関わることが明らかとなっており、本研究課題では出生後早期の腸内細菌が宿主の腸管免疫系に及ぼす影響についてAOM-DSS大腸癌モデルを用いた検討を行った。まずSPFマウス及び無菌環境で出生したGerm Free(GF)マウスを離乳期以降にSPFマウスと一緒に飼育し常在細菌を獲得したexGFマウスの腸内細菌叢・腸管遺伝子発現を次世代シークエンスにより解析したところ、exGFマウスはSPFマウスと比較し構成の大きく異なる腸内細菌叢を有し、exGFマウスでSPFマウスと比較しケモカイン伝達経路関連遺伝子群の発現が上昇していた。AOM-DSS大腸癌モデルでの検討ではexGFマウスでSPFマウスに比べ有意に腫瘍の発生が亢進し、CXCLケモカインの遺伝子発現が上昇していた。またSPFマウスに比べexGFマウスで顆粒球系骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の細胞群が有意に増加していたが、CXCR2受容体中和抗体の投与によりexGFマウスでのMDSCの誘導及び大腸腫瘍発生は著明に抑制された。また潰瘍性大腸炎患者で大腸癌を合併した患者群のCXCLケモカインの遺伝子発現を解析したところ、健常人や大腸癌を合併しない患者群に比べ発現が亢進しており、ヒトにおいてもCXCLケモカインが大腸炎症性発癌に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管炎症性マクロファージに発現するIL-36を発端としたサイトカインネットワークについてT細胞、樹状細胞を中心に解析を行い報告した。また、出生後早期の腸内細菌に着目し、CXCLケモカイン及び骨髄由来免疫抑制細胞を介した大腸炎症性発癌メカニズムに関して検討を行い報告した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画から使用する遺伝子改変マウスの変更が多少あるが基本的な骨子については変更なく進められており、特に令和2年度に計画している実験への支障はないと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が必要となった物品が生じたため。
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