研究課題/領域番号 |
18K15131
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
柿崎 正敏 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (00778954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / B型肝炎ウイルス / 腸内細菌叢 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
HBV 感染肝細胞から放出される細胞外小胞 (Extracellular vesicles: EVs) に含まれるタンパク質を LC/MS を用いて網羅的に解析した。その結果、非感染・感染細胞由来 EVs 双方に含まれるタンパク質が 109個、感染細胞由来 EVs のみに含まれるタンパク質が 95個あることがわかった。また、我々のこれまでの研究で感染細胞由来 EVs を取り込んだ細胞では PD-L1 の発現が上昇することがわかっているが、LC/MS 解析の結果に基付く pathway 解析の結果、PD-L1 の発現上昇に関わるのは、MAPK-ERK1/2 と PI3K-AKT シグナル伝達経路であることが明らかになった。 次に、感染細胞由来 EVs を取り込んだ骨髄細胞が小腸と大腸のどの部位に集積するのかを詳細に検討した。その結果、小腸では胃に近い部位ほど多くのEVs を取り込んだ骨髄細胞が集積していた。さらに、大腸では、盲腸に近い部位ほど多くのEVs を取り込んだ骨髄細胞が集積していた。 次に、感染細胞由来 EVs を取り込んだ骨髄細胞が腸管向性を獲得するメカニズムの解析を行った。腸管ホーミング受容体として C-C chemokine receptor type 9 (CCR9) とα4β7インテグリンが知られている。そこで、FACSを用いて、HBV 非感染・感染肝細胞由来 EVs+ 骨髄細胞における、CCR9 とα4β7インテグリンの発現を検索した。その結果、これらの受容体の発現に差は見られなかった。次に、CD103 は樹状細胞が腸管にとどまるために必要な分子であることがわかっていることから、非感染・感染肝細胞由来 EVs+ 骨髄細胞での CD103 の発現を検索した。その結果、感染肝細胞由来 EVs+ 骨髄細胞で CD103 の発現が上昇することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HBV感染細胞から放出される EVs に含まれるタンパク質の網羅的な解析、EVs を取り込んだ細胞で PD-L1 の発現が上昇するメカニズム、感染細胞由来 EVs を取り込んだ骨髄細胞が腸管向性を獲得するメカニズムの解析等を終了し、当初の研究計画のおよそ 50% は 2018年度中に達成することができた。また、論文も発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
EVs または EVs+ 骨髄細胞移入前後の小腸・大腸から細胞を回収し、免疫グロブリン A 産生細胞、制御性 T 細胞、Th17 細胞の細胞集団の存在比を FACS を用いて検索する。さらに、EVs または EVs+ 骨髄細胞移入の小腸・大腸において、EVs+ 細胞の近傍で起こる現象を免疫組織化学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、これまで蓄積した研究成果を論文としてまとめるための実験を中心に行った。そのため、今後の研究を進展させるために、次年度に資金を残した。 次年度は、当初の計画通り、生化学、細胞生物学などの手法による解析に必要な、遺伝子関連試薬、生化学・組織化学試薬、細胞培養などに消耗品購入を中心に使用する。情報収集・交換、成果発表のための学会参加費用・旅費にも充てる予定である。
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