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2019 年度 実施状況報告書

ATP2A2遺伝子をターゲットにしたダリエ病表皮モデルの樹立と二次感染予防の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K15134
研究機関福岡大学

研究代表者

佐藤 絵美  福岡大学, 医学部, 助教 (10803893)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードATP2A2 / ダリエ病 / 表皮バリア機能異常 / 細胞外マトリックス / 糖鎖
研究実績の概要

申請者はATP2A2機能不全がある三次元表皮内にTLR3アゴニストであるPoly(I:C)やMAVSアゴニストであるPoly(I:C)とLL37の複合物の角層側から投与し、24時間後のIFNβ1の産生をqRT-PCRで確認した。結果、ATP2A2の機能不全によってIFN-β1のmRNA発現が低くなることが判明した。同アゴニストでATP2A2機能不全のある三次元表皮を刺激した後にHSV1を感染させると、低いながらもIFN-β1の産生はHSV1の表皮内増殖を無刺激の群と比較して抑制した。
また表皮の構造学的欠陥を補うために臨床で使用されている代表的な保湿剤である白色ワセリンと同基材にヘパリンを混入した製剤を三次元表皮モデルの角層側に塗布し、どの程度HSV1感染を予防することができるか検証したところ、ヘパリンはHSV1のgDタンパクと強固に結合することによってウィルスの表皮内侵入をほとんど抑制することができた。
過去のATP2A2機能不全がある三次元表皮モデルの解析研究と併せて上記の結果をJournal of Investigative Dermatologyに報告した。(J Invest Dermatol. 2018 Dec;138(12):2540-2549. PMID: 29870688)
さらにこれらの三次元表皮モデルを用いてマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行ったところ、ATP2A2の機能不全は予想外に悪性腫瘍に関わるプロテオグリカンや細胞外マトリックス関連遺伝子、さらには基底細胞癌に関連した遺伝子の発現を優位に抑制することが判明した。この傾向はPoly(I:C)を添加した群でも同様に確認することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2018年8月から2019年3月まで出産や育児に伴う休暇を取得し、2019年4月より微生物・免疫学教室から皮膚科学教室へ学部内異動があったため。

今後の研究の推進方策

ATP2A2遺伝子をノックダウンした三次元表皮の網羅的遺伝子解析で、この遺伝子が予想外に基底細胞癌の発現を優位に抑制することが示唆された。過去の文献を検索してもダリエ病に基底細胞癌を合併した症例は稀で、単数報告で5症例しか確認できなかった。さらにそれらの報告論文では、2例で放射線治療の治療歴があった。163名のダリエ病患者の解析でも皮膚悪性腫瘍の報告はない (J Am Acad Dermatol. 1992 Jul;27(1):40-50.)。
今回の網羅的遺伝子解析の結果はダリエ病の患者の遺伝子変異が基底細胞癌の発生を抑制している可能性を示唆した。さらに詳細な調査を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

マイクロアレイ解析結果を当該年度に国際学会で発表する予定であったが、さらにデータを追加する必要があったため学会発表を見送り、旅費の支出がなくなった。次年度に研究結果の発表を予定しているが新型コロナウィルス感染拡大により国際学会での発表は難しいため国内での発表、もしくは論文化を考慮している。

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公開日: 2021-01-27  

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