研究課題/領域番号 |
18K15138
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森田 将之 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 講師 (60709632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱帯熱マラリア原虫 / LSA3 / 赤血球侵入 / ワクチン候補 / デンスグラニュール |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでにゲノムワイドな免疫スクリーニングによって新規赤血球期マラリアワクチン候補分子を探索した。その結果、長年肝臓期マラリア原虫に対するワクチン候補として注目されているLiver Stage Antigen 3 (LSA3) が赤血球期にも発現し、抗LSA3抗体が原虫の赤血球侵入を阻害することからLSA3が赤血球期ワクチンとしても有望であることを報告した。しかしLSA3の機能は未知であり、今後のワクチン開発へ向けた機能解析が必要である。そこでLSA3遺伝子欠損原虫 (LSA3KO) を作製しその表現型解析を行った。 LSA3は赤血球侵入時に機能することが考えられるため、当該年度はまず、LSA3KOの赤血球侵入時タイムラプスイメージングを行った。マラリア原虫は赤血球へ侵入する際、赤血球表面へ接着し、方向を変え、先端部と赤血球の間に強い結合を形成する。その後、赤血球内部へ侵入を開始し、侵入途中から赤血球膜が棘状に変化する。棘状に変化した赤血球膜の形が正常に戻ると侵入が完了し赤血球内部にマラリア原虫が観察できる。野生型原虫 (NF54株) では上記の通り侵入完了した原虫を観察できたが、LSA3KOでは赤血球膜の形が正常に戻っても赤血球外へ原虫の一部が露出して観察され、侵入完了した原虫を観察できなかった。侵入完了した原虫の割合を算出した結果、15分間の観察において野生型では70%の原虫が侵入できたことに対して、LSA3KOでは30%しか侵入を完了できなかった。このことからLSA3KOは赤血球侵入において遅延が起こっていることが示唆された。 また、免疫蛍光抗体法によって赤血球侵入後のLSA3KO寄生赤血球の原虫内膜複合体、寄生胞、寄生胞膜を観察した結果、各分子マーカーは野生型と同様の局在を示した。次年度は、原虫の赤血球侵入時のLSA3の動態観察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、LSA3遺伝子欠損原虫の赤血球侵入時のタイムラプスイメージングによる表現型解析を実施できた。また、赤血球侵入後のマラリア原虫の原虫内膜複合体、寄生胞、寄生胞膜を免疫蛍光抗体法で観察した結果、各分子マーカーは野生型とLSA3遺伝子欠損原虫で同様の局在を示した。現在は、赤血球侵入時のLSA3の動態解析を行っており、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
LSA3の赤血球侵入時の動態を明らかにするため、LSA3のC末端にGFPを融合させた遺伝子組換え原虫を作製し、蛍光ライブイメージングを行う。申請者も経験済みのCRISPR/Cas9システムで、相同組換えによりLSA3遺伝子の3’末端にGFP遺伝子を導入する (LSA3-GFP原虫)。LSA3は赤血球侵入型原虫メロゾイトのデンスグラニュール (DG) と呼ばれる細胞内小器官に局在することが分かっている。LSA3-GFPがメロゾイトのDGに局在することを確認するため、まず、LSA3-GFP原虫メロゾイトを固定し、抗GFP抗体と抗RESA抗体 (DGマーカー) で染色・観察する。その後、蛍光ライブイメージングによって、原虫の赤血球侵入時のどのタイミングでLSA3-GFPがDGから感染赤血球のどこへ分泌されるかリアルタイムに観察する。GFPによる立体障害が原因で、LSA3-GFPがDGに局在しない可能性が考えられる。その場合、赤血球侵入時の内在性LSA3の局在を観察する。野生型メロゾイトをヒト赤血球と混合し侵入開始後、1, 5, 10, 15分でサンプルを調製し、LSA3の局在を免疫蛍光抗体法で観察することによって赤血球侵入時のLSA3の時空間動態を明らかにする。 マラリア原虫の赤血球侵入時にカルシウムイオンが赤血球内へ流入することが知られている。赤血球侵入に遅延が起こることが示唆されたLSA3KOにおいてカルシウムイオンの動態がどのように変化するかを解析するため、カルシウムイオンの蛍光インジケーターを用いた蛍光タイムラプスイメージングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに保有している試薬・消耗品を用いる実験が多かったため、物品費を節約できた。 次年度は、遺伝子組換え原虫作製のための遺伝子関連試薬、マラリア原虫培養関連の消耗品、および蛍光タイムラプスイメージング用の試薬に使用する予定である。また、研究成果発表のための学会への旅費、英語論文の校閲および投稿料に使用する予定である。
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