マラリアは、マラリア原虫が赤血球への侵入と破壊を繰り返すことで発症する寄生虫感染症である。申請者はこれまでにマラリア原虫の赤血球侵入を阻害する新規発症阻止ワクチン候補タンパク質LSA3を見出している。しかしLSA3の機能は未知であり、今後のワクチン開発へ向けた機能解析が必要である。本研究課題はLSA3の機能に立脚したマラリア発症阻止ワクチンの開発を目的として赤血球侵入時のLSA3の機能解析を行った。 前年度までにLSA3遺伝子欠損原虫の赤血球侵入時のリアルタイムイメージングによって、LSA3遺伝子の欠損により赤血球侵入の遅延が起こることが示唆された。 最終年度はマラリア原虫の赤血球侵入時にLSA3がいつどこへ分泌されるか時空間的な局在の動きを明らかにするため解析を行った。まず、LSA3のC末端にGFPを融合させた遺伝子組換え原虫を用いて赤血球侵入時のLSA3-GFPの蛍光リアルタイムイメージングを試みた。しかし、励起光照射下で赤血球への侵入を成功させたマラリア原虫は観察できなかった。そこで野生型原虫の赤血球侵入中の固定サンプルを調製し、内在性LSA3の局在を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、赤血球侵入の初期段階ではLSA3はまだ分泌されておらず原虫の内部に観察されたが、後期段階になると分泌されて原虫の後部に局在していることが分かった。さらに、原虫の後部に分泌されたLSA3は外部環境へ露出しており外部から抗体がアクセス可能であることが分かった。 本研究課題において、LSA3遺伝子の欠損によって侵入遅延が起こったこと、LSA3は赤血球侵入中のマラリア原虫後部に局在したことから、特に赤血球侵入の完了に関わる分子である可能性が考えられる。LSA3の機能解析を進めることでマラリア原虫の赤血球侵入の分子メカニズムの一端を明らかにでき、マラリアワクチン開発に貢献できると考える。
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