研究課題/領域番号 |
18K15141
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高木 悠友子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感染症 / 創薬標的 / 遺伝子組換え / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
Trypanosoma cruziには哺乳類細胞に使用するような化学的トランスフェクション試薬が効かないため、エレクトロポレーションが現状唯一の核酸導入手法として使われている。近年、CRISPR/Cas9の活用によりトリパノソーマ原虫においても遺伝子ノックアウトが簡便に行えるようになってきた。しかし致死性のノックアウトが発動した場合はそれ以上原虫が増えないため、スケールアップが難しいエレクトロポレーションによるgRNA導入では解析に必要な大量のサンプルを回収できないという課題がある。 昨年度までの研究で、大量に原虫を増殖させた後にCas9発現を誘導できるよう、Tet発現誘導によるノックアウトシステムの構築を試みた。Cas9酵素の発現をテトラサイクリンのon/offにより誘導できる系を構築し、gRNAもCas9と同じプラズミド上で同時にTet誘導されるよう設計した。このCas9-gRNA同時発現により、原虫の増殖能に影響が出ることがいくつかの標的で観察できた。増殖効率の低下した原虫は、細胞肥大や鞭毛数異常など遺伝子ノックアウトの影響がみられたが、全ての原虫に一様に起こるわけではなく、個々の原虫のCas9-gRNA発現量にはかなりのばらつきがあることが示唆された。ノックアウト効率のばらつきは、Cas9発現原虫にエレクトロポレーションでgRNAを導入する際にも問題になる。 そこで今年度は、ばらつきのあるサンプルをいかに簡便に評価できるかを検討した。そのための手法として、ノックアウト漏れの原虫の増殖が全体の原虫数に与える影響を最低限に抑えるため、原虫を1細胞ずつ区画化して個別に培養する手法を開発している。1細胞培養はノックアウト原虫の評価のみならず、複数の感染ステージが混在して単一ステージの単離が煩雑な原虫サンプルの効率的な利用にも繋がると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症への対策により、雇用したスタッフや研究代表者自身が実験を行えないなどの影響が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
原虫を1細胞ずつ区画化して個別に培養することにより、ノックアウト効率の低い原虫の増殖評価や、複数ステージが混在したサンプルの利用など、アッセイの効率化や多様化を図る。また、ノックアウト発動後の標的遺伝子発現量の検証や、ノックアウト表現型について更に詳細な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定だった国際学会がコロナ禍で中止となり、交通費や宿泊費として確保していた予算が使用されなかった。翌年度分として繰り越し、最終年度の研究成果をまとめるために使用する。
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