重篤な肺炎を引き起こす病原細菌レジオネラは、IV型分泌装置を介して約300ものエフェクタータンパク質を宿主に輸送することにより宿主小胞輸送経路をハイジャックし、小胞体(ER)膜由来の液砲(LCV)を構築し感染を確立する。しかしながら、LCVがどのようなプロセスを経てERを模倣したオルガネラ様構造体に変貌を遂げるのか、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。 本研究課題では、まず初めに、Lpg1621はヒトOTUB1と相同生が高い脱ユビキチン化酵素(DUB)をコードしているドメインと膜貫通ドメインを有することが明らかとなり、LotBと名付けた。LotBはK63連結型ユビキチン鎖を特異的に切断することが分かった。次に、LotBは宿主小胞輸送システムにおいて重要な役割を担うCOPI小胞と相互作用することが明らかとなり、さらに、COPI小胞が機能する場である初期分泌経路を阻害し、その阻害にはLotBのDUB活性と膜貫通ドメインの両方が必須であることが分かった。また、ER由来SNAREタンパク質Sec22bがレジオネラ感染初期にユビキチン化され、感染後期になるとそのユビキチン化修飾がLotBによって解除されることが分かり、LotBによるSec22bの脱ユビキチン化は感染初期にLCV上に形成されたSec22b-Stx3間のSNAREペアリングの解除を促進することが明らかとなった。LotBを介したSec22bからのStx3の解離は、感染後期にLCV構築が完了する際、Sec22bが別のER由来SNAREとペアリングを作るのに役立ち、また、Stx3が再び細胞膜で本来のSNAREペアリングを形成し、正常な細胞状態を維持するために再利用される可能性が示唆された。機能未知エフェクタータンパク質LotBの解析を通し、レジオネラ感染におけるLCV構築メカニズムの一端を明らかにすることができた。
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