研究実績の概要 |
機能改変したβ-1,6-グルカナーゼの変異体を用いたサンドイッチELISAを構築したことで、血清含有培地で培養した各種カンジダ属菌の菌体外多糖を高感度に検出することが可能となった。この機能改変酵素は大腸菌で大量発現したのち、精製後少なくとも数か月間~数年間程度冷蔵庫で保管しても本来の酵素活性が戻ることはなく、β-1,6-グルカンに対するプローブとしての機能が保持されていることを確認した。カンジダ菌培養後の同一検体を用いた解析では、β-1,6-グルカンを指標とするサンドイッチELISAは、β-1,3-グルカンを指標とするリムルスG試験で得られた結果に対して正の相関性を示した。一方、各種アスペルギルス属の培養上清中に、β-1,6-グルカナーゼ変異体と反応する分子は存在しなかった。また、ルシフェラーゼ等の酵素とプローブを融合して大腸菌で大量発現させたところ、pHの変化や超音波による破砕処理の影響により、一部のプローブと酵素が分離することが確認された。そこで低分子量の酵素を選択し、これをプローブと融合することで、安定した状態で酵素標識プローブを精製することができた。酵素標識β-1,6-グルカナーゼ変異体を用いた解析によって、グルカナーゼ変異体が重合度(DP)11から重合度15程度のゲンチオオリゴ糖を認識していることを明らかにした。一方、植物由来配糖体などに関与する低分子量のゲンチオオリゴ糖とは反応性を示さなかった。従って本測定法は、細胞壁に長鎖のβ-1,6-グルカンを有する真菌の検出に効果的であることが明らかとなった。
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