ヘリコバクター・シネディ臨床分離株199株について、微量液体希釈法によりMICを測定した。ペニシリン系薬剤は中~高度耐性であり、特にアンピシリンとカルベニシリンにおいてMICが64μg/mL以上を示す株が複数存在し、ペニシリン系の中でも強い耐性傾向を示した。アンピシリンとアンピシリン/スルバクタム、ピペラシリンとピペラシリン/タゾバクタムのMICを比較すると同等のMIC値が得られたため、βラクタマーゼは産生していないと考えられた。カルバペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン、クロラムフェニコールは低いMIC値を示した。一方で、マクロライド系およびキノロン系は耐性化が進んでいる傾向にあった。シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンはMIC90が >64 μg/mLとなり、強い耐性傾向を示した。キノロン系抗菌薬の耐性化については、Thr84→IleおよびAsp88→Asnの二重変異株で高度耐性傾向であったことから、二重変異によりキノロン結合領域の構造が変化して、キノロン系薬と結合しにくくなっていると考えられた。また、いくつかの症例では初回感染株と再発株のそれぞれ2株はGyrA変異が同一のまま高度耐性を獲得したという結果が得られたことから、キノロン系抗菌薬の高度耐性化にはGyrA以外の別の因子も関与している可能性が考えられた。 また、ヘリコバクター・シネディの6型分泌装置(T6SS)遺伝子群に注目し、構成遺伝子を欠損した株を作成して、T6SSの機能の探索を行った。T6SSのicmF欠損株および野生株を腸管上皮細胞株およびマクロファージ様細胞株に感染させ、感染菌量を比較したところ、icmF欠損株よりも野生株の方が、高い付着性および侵入性が観察された。現在はT6SSのエフェクターについて解析中である。
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