研究実績の概要 |
【背景】近年、肺内は無菌ではなく一定の細菌叢が存在し、呼吸器疾患の発症と経過に関わるという報告がなされている。真菌の胞子は細菌よりも容易に肺に侵入するが、真菌叢と呼吸器疾患との関係に着目した研究はほとんどない。 【方法】診断過程で気管支肺胞洗浄(BAL)を受けた185症例のうち、びまん性肺疾患42症例(特発性間質性肺炎(IIP)20例、膠原病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)8例、サルコイドーシス8例、その他の疾患6例)を選択した。その他の疾患は、BAL施行時はびまん性陰影があったものの、その後診断がつかないまま陰影が自然に消失した症例とした。対象症例のBAL液から真菌DNAを抽出してITS2領域を増幅し、PCR産物は2%アガロースゲルで電気泳動を行い、450-500bpの増幅産物を確認した。29症例でITS2領域が増幅され、各サンプル由来のPCR産物を等モルになるよう混合して精製後、シークエンス用ライブラリーを作成した。NovaSeq (Illumina)を用いて250 bp, paired endでシークエンスを行った。 データ解析:raw tag 配列生成とフィルタリングを行い、類似度(97%以上)を基準としたOTUクラスターに分類し、以後の解析を進めた。 【結果】CTD-ILD群とサルコイドーシス群、IIP群とサルコイドーシス群の間で、α多様性に有意差が認められた。個々の患者のマイコバイオーム(β多様性)を比較すると、クラスター形成のパターンがグループ間で異なっていた。 【結論】疾患ごとに肺内の真菌叢は異なる傾向があり、これらの結果は、原因不明とされる疾患の病因についての理解を大きく前進させる可能性がある。
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