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2019 年度 実施状況報告書

ファージ間相互作用が志賀毒素産生に与える影響の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K15156
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

李 謙一  国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (80721711)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード腸管出血性大腸菌 / ゲノム解析 / 志賀毒素ファージ
研究実績の概要

腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Eshcerichia coli:EHEC)のゲノム中には、複数のラムダ様ファージが存在する。このうち、志賀毒素産生性ファージ(Stxファージ)は、EHECの主要な病原性因子であるStxをコードしている。Stxファージの多様性と同一ゲノム内に存在する類似ファージ(ラムダ様ファージ)との関連性を明らかにする目的で、EHEC O111、O157およびO86の解析を行った。
O111の解析では、28株のロングリードシークエンシングによって、Stxファージ全長の塩基配列解析を行った。その結果、同菌はearly regionの配列から、主に8種のStx2ファージを保有することが明らかとなった。Early regionの型間でStx2の産生量に顕著な差はなかったが、これはラムダファージ間での組換えが関与している可能性が示唆された。
O157の解析では、stx1およびstx2を保有する菌株について、Stxファージおよび類似ラムダファージ欠損株を作製し、Stx産生量を測定した。この結果、一部のStx類似ラムダファージ欠損株では、Stx産生パターンが変化することが明らかとなった。
O86の解析では、国内で分離された腸管凝集接着性大腸菌の完全長ゲノム配列を決定したところ、2011年にヨーロッパで大規模集団感染に関与したStx-EAEC O104:H4が保有するStx2ファージとほぼ同一のファージが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EHEC O111の解析では、新たに8株についてロングリードシークエンシングを行った。これまでの解析分と合わせて計28株のStxファージを解析した結果、同菌が保有するStx2ファージは8種のearly regionに分けられることが明らかとなった。しかしながら、early regionの配列とStx2産生量に明確な関連性は認められなかった。その要因として、類似ファージ間での組換え等が考えられた。
また、stx1およびstx2を保有するEHEC O157菌株について、それぞれのStxファージおよび類似ラムダファージ欠損株を作製し、Stx産生量を測定した。その結果、Stxファージ欠損株では、他方のStx産生に変化はなかった。一方、Stx類似ラムダファージ欠損株では、3時間時点でのStx1およびStx2産生量が減少することが明らかとなった。
EHEC O86の解析では、研究成果をまとめて国際学術誌に投稿した。

今後の研究の推進方策

EHEC O157には、菌株当たり十数カ所の複数のファージおよびファージ様配列が存在する。今後は、それらの欠損株を複数作製して、Stx産生量などに与える影響を明らかにする。欠損株がStx産生量に影響を与えたファージについては、RNA-Seqなどによるトランスクリプトーム解析を行うとともに、ファージのショットガンライブラリーを用いたStx産生量に影響する因子の同定を行う。

次年度使用額が生じた理由

EHEC O157の解析において、一部のStx類似ラムダファージの欠損がStx産生量に影響を与えることが判明したため、新たにRNA-seq等を行う必要性が生じた。また、使用菌株が有する別のラムダファージの影響を調べるために、複数のファージ欠損株を作製してStx産生量等を測定する必要性が生じたため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 志賀毒素産生性腸管凝集性大腸菌 (Stx-EAEC) O86における集団感染由来O104:H4と同一のStx2aファージの獲得2019

    • 著者名/発表者名
      木全恵子, 李 謙一, 綿引正則, 磯部順子, 大西 真, 伊豫田 淳
    • 学会等名
      第93回日本細菌学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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