研究実績の概要 |
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Eshcerichia coli:EHEC)のゲノム中には、複数のラムダ様ファージが存在する。このうち、志賀毒素産生性ファージ(Stxファージ)は、EHECの主要な病原性因子であるStxをコードしている。Stxファージの多様性と同一ゲノム内に存在する類似ファージ(ラムダ様ファージ)との関連性を明らかにする目的で、本年度はEHEC O111およびOX18の解析を行った。 O111の解析では、新たに2株のStx2ファージ保有株のロングリードシークエンス解析を行うとともに、2006年から2014年に分離された国内株を網羅する170株のPCRによって、Stx2ファージの型を特定した。この結果、供試菌株はAからHの8つの型に、次の割合で型別されることが明らかとなった:A, 62.2%; B, 4.9%; C, 1.8%; D, 7.3%; E, 12.2%; F, 1.2%; G, 6.1%; H, 1.8%。これらの型ごとにStx2産生量を測定したところ、有意な差は認められなかった。また、ファージの型と系統は一致せず、頻繁なファージの獲得やファージ遺伝子の組換えが起こっていることが示唆された。 OX18の解析では、小児死亡例から分離された株を含む計26株について、MiSeq(illumina)およびMinION(Oxford Nanopore, 死亡例由来株のみ)による全ゲノム配列解析を行った。この結果、死亡例由来株を含む7株がstx2a遺伝子を2コピー有することが判明した。同遺伝子のコピー数が重症化に与えた影響については今後検討する必要がある。
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