研究課題/領域番号 |
18K15158
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
平林 亜希 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 研究員 (00801911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コリスチン / LPS |
研究実績の概要 |
コリスチンはグラム陰性菌に対して濃度依存的かつ強力な短時間殺菌作用を持つ。近年の多剤耐性グラム陰性菌の増加を踏まえ、コリスチンは2015年より本邦でも製造販売が承認され、多剤耐性グラム陰性菌の治療薬として再注目されるようになった。一方で2015年に中国で獲得性のコリスチン耐性遺伝子mcrが初めて発見され、その後、世界各国で伝達性プラスミドを介したコリスチン耐性遺伝子mcrの拡散が懸念されており、早急な対策が必要である。本研究ではコリスチン耐性菌への新たな治療法を開発することを目的に、低用量コリスチンと併用効果のある薬剤の探索と機序の解明を行う。 平成30年度は、コリスチンと既存の承認薬との併用効果とその機序について検討した。まず780種類のFDA承認薬を含む化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、mcr陽性コリスチン耐性大腸菌実験室株に対しコリスチンと併用効果のある薬剤を同定し、そのうち抗がん剤など感染症の治療に不適な薬剤を除き21種類の承認薬を選出した。さらにコリスチンと21種類の承認薬の併用下でそれぞれの自然耐性株を選択し、次世代シークエンサーでDNA変異部位を解析した。その結果、併用療法に対する耐性株の多くはグラム陰性菌のLPSなどの外膜構成因子の輸送系に関わる遺伝子に変異があることが分かった。いくつかの併用療法は臨床・家畜分離株にも実験室株と同様の効果を認め、これらの承認薬とコリスチンの併用の臨床的な応用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コリスチンと併用効果のある21薬剤はLPSなど外膜構成因子の質または量を変化させることでコリスチンとの併用効果をもたらす可能性が示唆された。このことから今後の実験計画として、薬剤によるLPSの変化、薬剤とLPSとの相互作用を中心に機序を解明していく方針を立てることができた。また、臨床分離株で効果が得られた薬剤を選択でき、臨床的な応用を見据えた動物実験を行う計画を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として下記の実験および解析を予定している。 1) 承認薬曝露後の菌体外膜の荷電性の解析: MCRはLPSのリピドAにホスホエタノールアミン(PEA)を付加し、外膜の陰性荷電を減少させコリスチンの効果を減弱させる。mcr陽性株に承認薬を曝露すると、減少していた陰性荷電がどう変化するのかについて陽性荷電性蛍光試薬を用いて明らかにする。また曝露時のリピドAの変化について質量分析を用いた解析を行う。 2) 分子間相互作用解析装置を用いた解析: mcr陽性のコリスチン耐性菌ではコリスチンとLPSの結合が低下している。承認薬で曝露後、コリスチン耐性菌のLPSとコリスチンとの結合がどう変化するのかについて調べる。Octet(Pall ForteBio社)はガラスファイバー先端に分子を固相化し、対象分子との相互作用を光の干渉をシグナルとして解析する装置である。これを用いてコリスチンとLPSとの相互作用の定量化、ならびにカイネティクス解析を行う。 3) マウス経鼻感染モデル、hollow fiber感染モデルを用いた解析: コリスチン耐性菌をマウスに経鼻感染して呼吸器感染モデルを作成する。低用量コリスチンと承認薬との併用効果を、マウスの生存率および肺内生菌数より判定し、in vivoで解析する。 hollow fiber感染モデルを用いて、より臨床に近い薬剤曝露濃度をin vitroで再現し、低用量コリスチンと承認薬の併用効果を検討する。
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