研究課題/領域番号 |
18K15160
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
平山 悟 国立感染症研究所, 細菌第一部, 研究員 (70778555)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メンブレンベシクル / 細胞間コミュニケーション / 形質転換 |
研究実績の概要 |
メンブレンベシクルは、菌種により相違はあるが20~400ナノメートルほどの小胞であり、グラム陰性・陽性問わずあらゆる細菌が産生し、細胞外に放出する。メンブレンベシクルは細菌間のクロストークにも重要な役割を有することが注目されつつある。メンブレンベシクルの宿主細胞への取り込みについては複数のモデルが示されている一方で、細菌細胞への取り込みメカニズムについては詳らかになっていない。 本研究では、細菌がメンブレンベシクルをどのように取り込むのか、そのメカニズムを明らかにするため、大腸菌を用いた検討を行った。まず、抗生物質耐性遺伝子を含むプラスミドを有する大腸菌の培養上清よりメンブレンベシクルを調製した。リアルタイムPCRの結果から、メンブレンベシクル1マイクログラム(タンパク質量)あたりにおよそ1×10の11乗個のプラスミドが含まれていることが明らかになった。このようなプラスミドを含むメンブレンベシクルを大腸菌の培養液に添加し8時間までインキュベート後、抗生物質を含む培地に塗抹することで、抗生物質耐性を有する数個のコロニーが得られた。これら形質転換体からは当該プラスミドを抽出することができた。これらのことから、大腸菌がメンブレンベシクルを取り込んだことで、大腸菌の形質転換が起こったことが示唆された。 今後は、どのような遺伝子がメンブレンベシクルの取り込みに関与するのかを明らかにするため、遺伝子欠損株を用いたスクリーニングを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌を用いた検討から、メンブレンベシクルが取り込まれることで、形質転換が生じる現象を確認することができた。大腸菌については遺伝子欠損株ライブラリーを保有しているため、今後これを利用してスクリーニング実験をするための土台が整備されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
メンブレンベシクルの取り込みに関与する遺伝子を明らかにするため、大腸菌の遺伝子欠損株ライブラリーを用いたスクリーニングを行いたい。また、細菌細胞がメンブレンベシクルを取り込む様子を、高速原子間力顕微鏡を用いたアプローチでリアルタイムにイメージングしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、平成30年度分についてはほぼ使用済みである。
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