単純ヘルペスウイルス(HSV: herpes simplex virus)は、ヒトに多様な病態を引き起こす医学的に非常に重要なウイルスである。宿主に感染したHSVは終生潜伏感染し、宿主が内的・外的刺激を受けた際に再活性化し、回帰発症する。HSVによる回帰発症が何度も繰り返される原因の一つとして、HSVが多様な宿主免疫回避機構を獲得していることが考えられる。本研究は、特に、NK細胞からの傷害回避を司るHSV因子を同定し、その制御機構を解明することを目的としている。 NK細胞回避に寄与する可能性がある新規HSV因子を一過的発現系を用いた解析により複数同定した。その中の1つのHSV因子のメカニズムを解析したところ、このHSV因子に変異を導入した組換えウイルスでは野生体ウイルスに比べてNK細胞の障害活性に寄与するリガンドの細胞表面発現に影響を及ぼすことが示唆された。また、HSV感染細胞においてNK細胞による障害回避に寄与するHSV因子の候補であることが示唆された。
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