研究課題/領域番号 |
18K15166
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
呉 成旭 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 研究員 (30817416)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モノネガウイルス / 自然免疫 / RIG-I / インターフェロン / リードスルーRNA |
研究実績の概要 |
細胞内ウイルスRNAセンサーRIG-Iは、感染細胞内にてウイルスRNAを認識し、迅速な自然免疫応答を惹起する。特にRIG-Iはマイナス一本鎖RNAをゲノムに持つモノネガウイルス目に属するウイルスに対して重要な防御機能を果たしているが、実際の感染におけるRNAリガンドについては不透明である。我々は、モノネガウイルスの転写エラー産物であるリードスルーRNAを新規RIG-Iリガンドとして同定した。本研究では、特に臨床上重要な麻疹ウイルス(MeV)とRSウイルス(RSV)に焦点を当て、リードスルーRNAのウイルス増殖と宿主免疫応答における生理的機能を明らかにすることを目的とする。さらに、リードスルーRNAを利用した核酸アジュバントの開発など、リードスルーRNAの臨床応用への可能性を探索する。2018年度は、主にRSVに焦点を絞り研究を行った。まず、RSVに高感受性を示したヒト咽頭がん由来のHEp-2細胞を用い、ストランド特異的RT-qPCRを行ったところ、ポリA陽性RNA画分中にリーダー配列(Le)とNS1遺伝子にまたがるリードスルーRNAを検出した。さらにこのRNAは、トータルRNAおよびポリA陰性画分中には検出されなかった。以上から、我々の先行研究(Oh et al., 2016)で解析したニューカッスル病ウイルス(NDV)の場合と同様に、RSVもLe由来の5’末端三リン酸とポリA配列を有するLeリードスルーRNAを産生することが明らかとなり、感染細胞内にてRIG-Iのリガンドとなり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RSVのストランド特異的RT-qPCRの条件検討が難しく時間を要した。しかしながら、RSVもNDVと同様にRIG-Iのリガンドとなり得るLeリードスルーRNAを産生していることが明らかとなったことは、特定のウイルスのみならず、広くモノネガウイルスのリードスルーRNAを対象とした本研究において大きな意義を持つと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、まずMeVについてストランド特異的RT-qPCRを行い、LeリードスルーRNAの検出を試みる。また、ストランド特異的ノザンブロット解析により、RSVとMeVのLeリードスルーRNAのサイズを確認する。その後、両ウイルスの感染細胞内におけるLeリードスルーRNAの継時的定量を行い、その産生動態を把握する。さらに、インターフェロン(IFN)遺伝子の発現誘導とウイルス遺伝子の増幅の動態と比較し、LeリードスルーRNA産生と宿主免疫、ウイルス増殖との関連性を検討する。以上の結果を手がかりにして、研究の後半ではLeリードスルーRNAとRIG-Iとの直接的な相互作用をiCLIP法により解析する計画である。加えて、LeリードスルーRNAのワクチンアジュバントとしての有用性の評価も行う。in vitro転写により合成したLeリードスルーRNA、もしくは感染細胞から単離したLeリードスルーRNA(単離方法や濃縮方法や等は要検討)を用い、すでにワクチンアジュバントとして開発が進められている合成二本鎖RNAであるpoly(I:C)と比較しながら、IFNや炎症性サイトカイン群の誘導活性の強度や動態、また刺激毒性などをまず培養細胞を用いて調べる。有効な効果がみられた場合、以降の動物実験に移行する準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は初期段階の条件検討に時間を割いたため、それほど高価な物品を新規購入する必要はなく、すでに研究室にある材料である程度まかなえた。2019年度はさらに実験の幅が広がるため、酵素類やトランスフェクション試薬等、高価な物品を新規購入する必要がある。
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