本研究では、以前に明らかにした細胞質局在APOBEC3Cがミトコンドリアゲノムに変異を導入した結果を踏まえて、EBV感染で上皮細胞に発現誘導される核および細胞質局在型APOBEC3の腫瘍化への役割を解明することを目的として研究を進めた。 組み換えEBV-eGFPをCD21発現上皮細胞株AGS細胞(AGS-CD21)に感染し、経時的にAPOBEC3Cの発現とミトコンドリアゲノム変異を検出した。EBV感染後24時間からAPOBEC3Cの発現とミトコンドリアゲノムの変異が誘導された。またEBV感染後にはI型インターフェロンのIFN-betaの発現やそのシグナル伝達により発現が誘導されるInterferon stimulation gene 15 (ISG15)の発現が増加した。IFN-betaをAGS-CD21細胞に加えて培養するとAPOBEC3Cの発現が誘導された。これより、EBV感染により誘導されるAPOBEC3Cとミトコンドリア変異はI型インターフェロンを介していることが考えられた。核に局在するAPOBEC3AもI型インターフェロンにより誘導されることから、上皮細胞におけるEBV感染は、I型インターフェロンの誘導を介した核および細胞質局在型APOBEC3により、宿主ゲノムとミトコンドリアゲノムへの変異導入をもたらし、腫瘍化につながることが考えられた。
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