研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の基礎研究では、肝がん細胞株由来のHepG2細胞株が世界的に用いられている。本研究において、我々はHepG2と同等以上のHBV感受性を示す細胞株を樹立し、新規抗HBV剤候補の探索やHBV感染増殖に寄与する新規宿主因子の同定を目指している。昨年度の研究により、HBVの感染受容体である胆汁酸トランスポーター(NTCP)を発現する肝がん細胞株由来のLi23細胞株を限界希釈法によるサブクローニング繰り返すことによりHepG2/NTCP細胞と同等以上のサブクローン化細胞(A8.15.78.10細胞)を得た。本年度はA8.15.78.10細胞の詳細な解析を行った。まず、NTCPのタンパク質発現レベル及びリン酸化レベルはサブクローニングを経るごとに上昇していることがわかった。また、自然免疫応答に関与するcGAS,STING経路の発現がサブクローニングによって低下していることもわかった。薬剤感受性についてHBVのエントリー阻害活性を有するCyclosporin A及びRosiglitazoneについて調べた結果、Cyclosporin AはHepG2/NTCP細胞と同等の抗HBV活性が認められた。しかし、RosiglitazoneについてはA8.15.78.10細胞において抗HBV活性が認められなかった。これらの薬剤感受性の差は細胞株の違いによる遺伝子プロファイルの差が影響していることが推測され、薬剤の正当な評価に複数の細胞株が必要であることが示唆された。これらの結果は国際学会(Ueda et al., HBV meeting 2019など)や論文(Ueda et al., BBRC, 2019)などに発表した。
|