研究課題
鳥インフルエンザウイルスによる宿主域の障壁突破は、ウイルス-ヒト宿主間の不適合性によって制限されている。申請者はこれまで、鳥インフルエンザウイルスが感染患者内で獲得するヒト適応変異を網羅的に探索することで、新規のヒト適応変異群を同定してきた(Arai Y et al, PLoS Pathog12:e1005583, 2016; Watanabe Y et al, Mbio 6:e00081-15, 2015)。これらの研究成果を発展させ、本研究は当該変異群を導入した組み換えウイルスをヒト適応化モデルウイルスとして用いることで、ヒト細胞内でのインフルエンザウイルス複製に必須の宿主因子を同定することを目的とする。さらに、同定した宿主因子に結合することでウイルス複製を抑制するリード化合物を探索し、その抗ウイルス作用を評価することで、新規抗ウイルス薬開発に向けた有用性を見出す。先行研究では、申請者が確立したポリメラーゼ三量体に結合する宿主因子を効率的に共沈させる免疫沈降法を用いて、wtウイルスポリメラーゼと比較して変異体ポリメラーゼ三量体に特異的に検出されるバンドを確認している。本年度はこれらのバンドに対してLC-MS/MSによる質量解析を実施することで、ヒト細胞内においてモデルウイルスポリメラーゼ蛋白質が特異的に結合するヒト宿主因子群を選出した。また、これらの候補宿主因子のノックダウンおよびノックアウトした細胞を作出中の状況である。
2: おおむね順調に進展している
ヒト細胞内でのウイルス複製に必須の宿主因子の候補を複数選出し、ノックダウンおよびノックアウトした細胞を作出している。
候補宿主因子群をノックダウンまたはノックアウトさせたヒト由来細胞にけるウイルス増殖性を解析し、ウイルス複製に重要なヒト細胞因子群を同定する。また、同定宿主因子の部分欠損体を作成することで、ウイルスポリメラーゼ蛋白質―宿主因子間の相互作用ドメインを決定する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
J Virol.
巻: 93(4) ページ: e01969-18
10.1128/JVI.01969-18
巻: 92(11) ページ: e02004-17
10.1128/JVI.02004-17
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 13066
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