研究課題/領域番号 |
18K15173
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
庄司 正樹 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (00636821)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / 抗ウイルス剤 / バクチオール / 標的探索 / 宿主タンパク質 / タンパク質解析 |
研究実績の概要 |
バクチオールは、マメ科オランダビユ属Psoralea corylifolia Linn.から単離された天然有機化合物である。最近、申請者は、培養細胞を用いて抗インフルエンザ活性を検討したところ、ウイルス増殖の阻害活性を見出した。しかし、バクチオールによりインフルエンザウイルスタンパク質の機能はどれも阻害されなかったことから、宿主側因子が抗インフルエンザ活性に関与すると考えた。したがって、抗インフルエンザ活性に重要な化学構造を探索したところ、バクチオールのフェノール部分およびテトラアルキル四級炭素の欠失により、抗インフルエンザ活性が消失した。この結果から、結合する宿主タンパク質を見出すために、抗インフルエンザ活性に影響しないバクチオールのホモプレニル側鎖末端部にリンカーを結合し、その逆側のリンカー末端部にビオチンを結合させる分子プローブを合成した。さらに、この分子プローブを用いて、プルダウンアッセイをしたところ、バクチオールと結合する4種類の宿主タンパク質を発見した。 しかし、これらの宿主タンパク質は、コントロールであるビオチンリンカーのみとの比較により見出していることから、抗インフルエンザ活性に重要な部分とは異なる部位に結合するタンパク質が含まれている可能性がある。したがって、本研究では、これらの可能性を排除するために、バクチオールのフェノール部分およびテトラアルキル四級炭素を欠失した化合物にビオチンリンカーを結合させた欠失体分子プローブを合成する。そして、ビオチンリンカーのみおよび上記バクチオール分子プローブとの比較により、抗インフルエンザ活性に関わる宿主タンパク質を同定する。 また上記の研究と同時に、本学所有の最新LC-MS/MSを使用することにより、4種類の宿主タンパク質を同定できるかどうか試験するために、試料に用いる結合タンパク質を大量に精製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バクチオールの抗インフルエンザ活性に関わる宿主タンパク質を同定するために、バクチオールのフェノール部分およびテトラアルキル四級炭素の欠失させた化合物にビオチンリンカーを接合させた分子プローブの合成を行った。 初めに、バクチオールアフィニティープローブコア部分の合成を行った。(+)-バクチオールをアセチル化した後、二酸化セレン酸化、Dess-Martin酸化、亜塩素酸酸化を行い、O-アセチル-1-カルボキシバクチオールを合成した。一方、コントロールに用いる不活性類縁体のカルボン酸誘導体は6-ヘプテン-1-オールをTBS化した後、ハイドロボレーションし、水酸基をメシル化・ヨウ素置換させ、PPh3と反応させることでホスホニウム塩へと導く。さらに、n-BuLiで処理した後、p-アセトキシベンズアルデヒドと反応させてcis-オレフィン中間体へと変換後、脱TBS化、Dess-Martin酸化、光異性化、亜塩素酸酸化を行って合成した。 次に、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー型ビオチンアフィニティープローブの調製を行った。文献記載の方法に従い、EDCを縮合剤として用いて、NHS存在下で市販のbiotin-PEG(8)-NH2と反応させ、続いてメタノール中K2CO3を用いて脱アセチル化を試みた。しかしながら、目的とする縮合体は全く得られなかった。次に、NHSに変えて、DMAPやHATUを用いる条件も検討したが、現在のところ目的とする化合物は得られていない。 また上記の研究と同時に、申請者は、インフルエンザウイルスを感染させたイヌ腎臓由来細胞株からタンパク質を抽出し、バクチオールのホモプレニル側鎖末端部にビオチンリンカーを接合させた分子プローブを用いプルダウンアッセイを行った。そして、電気泳動後、分子プローブと特異的に結合するタンパク質を、銀染色したゲルから大量精製した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、バクチオールの抗インフルエンザ活性に関わる宿主タンパク質を同定するためのコントロールとして、バクチオールの抗インフルエンザ活性に重要なフェノール部分およびテトラアルキル四級炭素の欠失させた化合物にビオチンリンカーを結合させた分子プローブは、得られていない。しかし、バクチオールの抗インフルエンザ活性に関わる部位を含んだ化合物のホモプレニル側鎖末端部にビオチンリンカーを接合させた分子プローブに対して、特異的に結合する4種類のタンパク質を大量に精製できた。 そこで、本年度は、バクチオールの欠失体にビオチンリンカーを結合させた分子プローブの合成を行うと共に、既に精製した4種類のタンパク質を試料として本学所有の最新LC-MS/MSを用い、これらタンパク質の同定に挑戦する。 以上の研究の進捗状況によっては、外部の専門会社への委託も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までに、バクチオールの抗インフルエンザ活性に関わる宿主タンパク質を同定するためのコントロールとして、バクチオールの抗インフルエンザ活性に重要なフェノール部分およびテトラアルキル四級炭素の欠失させた化合物にビオチンリンカーを結合させた分子プローブの合成が計画通りにいかなかった。しかし、バクチオールの抗インフルエンザ活性に関わる部位を含んだ化合物のホモプレニル側鎖末端部にビオチンリンカーを接合させた分子プローブに対して、特異的に結合する4種類のタンパク質を大量に精製できた。 そこで、本年度の助成金は、バクチオールの欠失体にビオチンリンカーを結合させた分子プローブの合成を行うために使用すると共に、既に精製した4種類のタンパク質を試料として本学所有の最新LC-MS/MSを用い、これらタンパク質の同定するために使用する。
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