研究課題/領域番号 |
18K15175
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
関 紗由里 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 研究員 (70758325)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | HIV / 宿主因子 / 抗原提示 / MHC-I |
研究実績の概要 |
エイズワクチン戦略として細胞傷害性T細胞(CTL)誘導の有効性が示されているが、HIV複製抑制効果の高いウイルス特異的CTLを効率的に誘導するためには、ワクチン抗原として何を選択するかが重要である。本研究では、HIV増殖過程で宿主因子と相互作用するウイルスタンパクについて、特にウイルス―宿主因子相互作用に付随する細胞内分解機構を経てウイルス抗原が細胞表面に提示される効率に着目する。宿主因子と相互作用するウイルスタンパクを発現させた細胞において、対応する宿主因子の有無で抗原提示の効率に差があるかを解析する。本研究はこれまで知られていなかったウイルス抗原提示に対する宿主因子の影響を解明し、特定のウイルスタンパク抗原提示を促進させることによる感染防御機構の増強という新しい戦略の起点となることが期待される。 本年度は、昨年度樹立した特定のMHC-I分子発現細胞株とVif-エピトープ発現ベクターを用いて、エピトープ特異的CTLによるキリングを測定する系を樹立した。BLCL(Bリンパ芽球)にベクターを用いてVif-エピトープを発現させ、同時に発現するレポーターによってフローサイトメトリーで発現を確認したのち、エピトープ特異的CTLと共培養を行った。共培養前後のVif-エピトープ発現細胞数変化からキリング効率を計算した。また、次年度に宿主因子発現がウイルス抗原提示に及ぼす影響の解析を行うための準備として、Vifと相互作用する宿主因子APOBEC3Gをノックダウンしたターゲット細胞の作製を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画はエピトープ特異的CTLクローンと標的細胞の共培養で得られる反応の解析を行うことであり、この計画に則り昨年度作製した細胞とVif-エピトープ発現ベクターを用いた実験系の確立を目指した。まずは特定のMHC-I分子を恒常発現するように樹立したBLCLにVif-エピトープを発現させたところへ、エピトープ特異的CTLを混合し、共培養時間やエフェクター細胞・ターゲット細胞の混合比を検討した。フローサイトメトリーでキリング効率を比較解析することを踏まえ、条件を最適化することには時間を要したが、本段階を経て実験系は確立された。また、次年度の計画に使用するための宿主因子ノックダウン細胞の樹立にも成功したため、本研究の現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は計画通り、(1)宿主因子発現がウイルス抗原提示に及ぼす影響の解析、(2)宿主因子によるウイルス抗原提示への作用機序の解明、と進めていく。(1)(2)ともに、昨年度および今年度確立した実験系でデータを蓄積することが可能である。宿主因子発現がウイルス抗原提示に及ぼす影響を解析するために、宿主因子との相互作用を欠損したウイルスタンパクを発現するベクターを作製する必要があるが、これまでに習得したベクター作製手技で手早く行うことを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、エピトープ特異的CTLによるキリングを測定する実験系を樹立することと、Vifと相互作用する宿主因子APOBEC3Gをノックダウンしたターゲット細胞の作製を行った。BLCL以外の細胞についても、確立した実験系において使用可能なMHC-I分子発現株をAPOBEC3G(-)で樹立しておきたい。次年度使用額はこの目的を達成するために用いる計画である。
|