研究課題/領域番号 |
18K15176
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日尾野 隆大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00775819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / レクチンマイクロアレイ / ウイルス学 / 糖鎖生物学 / マンノース型糖鎖 |
研究実績の概要 |
本年度はA型インフルエンザウイルス粒子に付加する糖鎖について包括的理解をすすめるために、昨年度検討したHAに付加する糖鎖に加えて、NAに付加する糖鎖の構造を解析する手法の確立に取り組んだ。HAの場合と同様にウイルス感染細胞培養上清からウイルス粒子を免疫沈降し、これをレクチンマイクロアレイに供して、NA特異的な抗体により糖鎖プロファイルの取得を試みたが、市販の抗NA抗体の中から、レクチンマイクロアレイに使用できるものを見つけることはできなかった。そこで、前年度に確立した組換えウイルス作出系を利用し、ペプチドタグ付加NAを有するウイルスを作出した。これと、抗タグ抗体を用いたレクチンマイクロアレイ解析によって、HAと同等のスタート材料を用いて、NA上の糖鎖を解析することに成功した。また同一出発材料を用いてHAとNAの糖鎖を比較解析した結果、HAでは複合型が、NAではマンノース型が優位な糖鎖付加が起こっていることがわかった。本成果については既に論文としてまとめ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定からやや計画を変更し、本年度はウイルス糖タンパク質に付加する糖鎖の構造解析を中心に研究を進めた。その結果これまでに、HAにおけるGalα1-3Gal構造の付加、NAにおけるマンノース型優位の糖鎖付加など興味深い事象が観察されており、これらの解析を通じてウイルスと宿主の間で生じるGlycosylationをめぐる攻防を明らかにできることが期待される。計画の変更はあったものの、HAに加えてNAの高感度とうさ分析系が確立されたことにより、本研究で目指す「技術基盤の確立」という意味では大きな進展があったものと考える。一方、COVID-19の影響でさらなる解析に遅れが生じることが予想されるため、進捗状況としては「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
Galα1-3Gal構造およびマンノース型糖鎖に着目した解析をすすめる。ウイルス糖タンパク質における糖鎖付加についての理解を深めるために、さらに詳細な糖鎖解析を試みる。具体的には、ウイルス糖タンパク質に付加する糖鎖について、レクチンによる分画や質量分析による糖鎖解析に加えることで、個々の糖タンパク質がどのようなGlycoformを有しているか明らかにする手法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上していた論文投稿にかかる費用の執行が次年度にずれ込んだため、次年度使用額が生じた。論文は2020年5月時点で既に投稿中である。
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