研究課題/領域番号 |
18K15178
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 朋子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00738792)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RNAサイレンシング / 自然免疫 / ウイルスセンサー / LGP2 / TRBP / マイクロRNA / 抗ウイルス応答 |
研究実績の概要 |
細菌やウイルスが感染すると、生体は免疫応答という生体防御機構を引き起こす。免疫応答には、自然免疫応答と獲得免疫応答があるが、自然免疫応答は免疫応答の初動で重要な役割を果たす即時対応型のシステムであり、サイトカインの誘導を伴う。哺乳類細胞にウイルスが感染すると、細胞外ではToll like receptors (TLRs)、細胞内ではRetinoic acid-inducible gene I (RIG-I) like receptors (RLRs)といったウイルスセンタータンパク質がウイルス特有の構成成分を認識し、I型インターフェロン (IFN)を誘導する。RLRsとしてRIG-I, Melanoma differentiation-associated protein 5 (MDA5), Laboratory of genetics and physiology 2 (LGP2)が知られるが、RIG-IとMDA5はそれぞれ異なる特徴を持つウイルス性RNAを認識しIFNを誘導するのに対し、LGP2はこれまでその機能が明確ではなかった。我々はこれまでウイルスセンサーであるとされながらも機能が不明であったLGP2が、RNAサイレンシングの主要因子であるTRBPとの相互作用を介して、microRNA (miRNA)による遺伝子発現ネットワークを制御することを見出した。IFNにより発現量が増加したLGP2はTRBPとの相互作用を介して、TRBPが結合する特定のmiRNAの成熟化を抑制し、その標的遺伝子群を発現上昇させた。LGP2とTRBPの相互作用を介した特定のmiRNAとその遺伝子群の発現制御は、ウイルス感染細胞において生体防御機構として機能していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は、細胞内ウイルスセンサータンパク質によるRNAサイレンシングの制御について、リコンビナントタンパク質やヒト培養細胞を用いた実験、さらに情報科学的な解析も行い、2報の原著論文を報告することが出来たため(Takahashi et al. 2018 Nucleic Acids Res. , Takahashi et al. 2018 Genes)。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、ウイルスセンサータンパク質によるRNAサイレンシングの制御が実際にウイルス感染細胞においてどのような生物学的意義をもつのかを解析している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に消耗品に使用する予定である。
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