研究課題
ヒト遺伝性自己免疫疾患APECEDはAire遺伝子の変異によって引き起こされる自己免疫疾患である。Aireは胸腺髄質上皮細胞特異的に発現し、胸腺内で自己反応性T細胞を除去するのに必須の因子の1つと考えられている。一方で、ほぼ全てのAPECED患者は通常免疫不全が原因で起こるカンジダ症を発症する。近年の研究によりAPECED患者はTh17サイトカインに対する自己抗体を持つことが発見され、これらの自己抗体がTh17細胞の機能を障害することでカンジダ症が発症する可能性が示された。しかし、何故APECED患者がTh17サイトカインに対する自己抗体を持つのかは不明である。Aire遺伝子は胸腺髄質上皮細胞に限定して発現すると考えられてきていたが、最近申請者は胸腺B細胞にもAireを発現することを報告した。末梢リンパ組織においてもAireを発現する細胞がいることが示唆されているが、その細胞は正しく同定されていない。申請者は末梢リンパ祖域において3型自然リンパ球の特徴を持つ細胞分画の一部にAireを発現する分画(AireILC3様細胞)の存在を発見した。本研究では、AireILC3様細胞がT細胞寛容誘導に与える影響を解明することを目的とする。平成30年度はAireを発現する細胞は3型自然リンパ球(ILC3)の特徴を持つ点、AireILC3様細胞はRORrt依存的に分化することを証明した。
1: 当初の計画以上に進展している
Aireを発現する自然リンパ球様細胞L(AireILC3様細胞)は3型自然リンパ球(ILC3)に属するかを評価した。自然リンパ球(ILC)はリンパ球様の形態を持つ、ミエロイド系の表現型を有さない、RAG非依存的と定義される。AireILC3様細胞はリンパ球様の形態を持ち、ミエロイド系の表現型を有さず、RAGKOマウスにおいても存在したため、自然リンパ球の1種と考えられた。AireILC3様細胞はRORrtを発現するため自然リンパ球の中でもILC3に属することが考えられた。またAireILC3様細胞はILC3に属するかを調べるためRORrtKOマウスの骨髄細胞と野生型マウスの骨髄細胞を同様の割合で混合し、致死量の放射線を照射したレシピエントマウスに移入することで混合骨髄キメラを作製した結果、AireILC3様細胞はRORrt依存的に分化することがわかった。野生型、Aire欠損マウスにおけるAireILC3の遺伝子発現を調べた結果、およそ700個の遺伝子がAireによって制御されることがわかった。
AireILC3様細胞のT細胞寛容誘導への寄与を評価するAireILC3様細胞が末梢性寛容に寄与するかを調べるためモデル抗原ovalbumin (OVA)がAireを発現する細胞で発現するAireOVAノックインマウス(AireOVA-KI)を用いる。AireOVA-KIマウスにOVA特異的T細胞を移入し、末梢性寛容が誘導されるかを調べる。また末梢性寛容がAireILC3によるものかを確認するために AireOVA-KIマウスをRORrtKOマウスに掛け合わせ、同様の実験を行う。ILC3細胞の抗原提示能を欠損したRORrtcre/ MHCIIfloxマウスと野生型マウスにIL-17またはIL-22を免疫し、Th17サイトカインに対する自己抗体産生を計測することでILC3細胞が Th17サイトカインに対する寛容誘導に寄与するかを評価する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Journal of Experimental Medicine
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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