ヒト遺伝性自己免疫疾患APECEDはAire遺伝子の変異によって引き起こされる自己免疫疾患である。Aireは胸腺髄質上皮細胞特異的に発現し、胸腺内で自己反応性T細胞を除去するのに必須の因子の1つと考えられている。一方で、ほぼ全てのAPECED患者は通常免疫不全が原因で起こるカンジダ症を発症する。近年の研究によりAPECED患者はTh17サイトカインに対する自己抗体を持つことが発見され、これらの自己抗体がTh17細胞の機能を障害することでカンジダ症が発症する可能性が示された。しかし、何故APECED患者がTh17サイトカインに対する自己抗体を持つのかは不明である。Aire遺伝子は胸腺髄質上皮細胞に限定して発現すると考えら れてきていたが、最近申請者は胸腺B細胞にもAireを発現することを報告した。末梢リンパ組織においてもAireを発現する細胞がいることが示唆されているが、その細胞は正しく同定されていない。申請者は末梢リンパ祖域において3型自然リンパ球の特徴を持つ細胞分画の一部にAireを発現する分画(AireILC3様細胞)の存在を発見した。本研究では、AireILC3様細胞がT細胞寛容誘導に与える影響を解明することを目的とする。これまでにAireを発現する細胞は3型自然リンパ球(ILC3)の特徴を持つ点、AireILC3様細胞はRORrt依存的に分化することを証明した。平成31年度はAireILC3様細胞は末梢リンパ組織で自己反応性T細胞に末梢性の寛容を誘導することを明らかにした。
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