研究実績の概要 |
生体内で免疫寛容を担う制御性T細胞(Treg)の維持破綻は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症や病態との関連が指摘されているが、Tregの生体内での安定的維持の機構については不明な点が多い。一方、レドックス(酸化還元)反応は生体内で恒常的バランスが保たれているが、活性酸素(ROS)の慢性的な増加は炎症性サイトカインの産生を促し、慢性炎症などの免疫反応を誘導する。自己免疫疾患でもROSが増加しているが、ROSの自己免疫疾患の発症や病態形成における役割は明らかではない。本研究では、レドックスが自己免疫疾患の発症や病態形成に関与するメカニズムとして、Tregの生体内維持に着目し、レドックスを介したその制御機構を明らかにすることを目的とした。 関節リウマチのモデルマウスであるコラーゲン誘導関節炎 (CIA) マウスに抗酸化剤N-acetyl-L-cysteine(NAC)および4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-oxyl(TEMPOL)を投与し、レドックス反応の自己免疫疾患への関与を検討したところ、NACおよびTEMPOLを経口投与したマウスでは、投与していないマウスと比較して関節における浸潤細胞数が顕著に減少しており、関節の肥厚および骨破壊も抑制された。CIAマウスでは、CD4ならびにCD8 Tregが減少しており、これらの細胞は抗酸化剤の投与によって、その数が回復することを見出した。さらに、Treg細胞内のROSの値は細胞数と逆相関することも見出している。また、抗体産生に関与する濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)および胚中心B細胞(GC B)の増幅も抗酸化剤の投与により顕著に抑制された。以上の結果より、自己免疫疾患においてレドックスバランスの破綻とそのTreg細胞の生体維持機構への関与を示すことができた。
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